変圧器のタップとは、二次側電圧の昇圧・降圧を簡易化したものです。変圧器内の巻線の途中から複数の端子を出すことで、二次側電圧が適正な出力になるよう調整できます。
変圧器のタップとは?
変圧器は、一次側端子からタップ板を通り、巻線へと電気が流れ、二次側端子に低圧が出力されるような内部構造をしています。タップは、変圧器の種類にもよりますが、主に6,300V・6,450V・6,600V・6,750Vの4種類があります。
配電線路が変電設備から遠かったり消費電力が高かったりすることで起きる電圧降下によって、高圧電圧が低くなると変圧器の二次側電圧も下がってしまいます。その反対に、電圧降下を見込んで高めの電圧で出力された場合、二次側電圧も高くなってしまうため、タップを切り替えることで安定した電気の供給を担っています。
なぜタップが必要?
変圧器にはいくつか種類がありますが、一般的なのは100/200Vを出力する単相変圧器です。この100/200Vは一般家庭のコンセントと同じ電圧です。
その中でも、様々なメーカーの家電が統一した電気制御ができるよう、101Vの上下6V以内(95V~107V)、202V±20V(182V~222V)と電気事業法施行規則で定められています。
そのため先述したように、一次側電圧の高低が一般需要家に影響が出ないようタップで電圧を調整し、安定した電気を供給できるようになっています。
タップを切り替えると?方法は?
一般的な単相変圧器の場合、1タップ切り替えるごとに、二次側電圧が2.5V(100±2.5V)変化します。
- タップを上げれば(6600→6750=2.5V昇圧)
- 下げれば(6600→6300=5V降圧)※100Vの場合
そのため、仮に一次側電圧が高く二次側電圧が109Vあった場合、電気事業法施行規則の「100±6V」からはみ出しているので、2タップ上げて規格内の104Vになるようにするのです。
タップの切り替えは変圧器によって変わりますが、端的に言うと端子を移動させれば対応する巻線数が変化して、タップが切り替わります。ハンドルでガチャっと回すものもあれば、変圧器内部の端子を手や専用の工具を使って切り替える方法など様々です。
変圧器タップの計算方法
変圧器のタップ計算は第一種電気工事士の平成25年・令和元年の試験問題として出題されています。タップ計算の公式は以下の通りです。

正直めんどくさいです。ここから電流など他の数値を求めたかったり正確な数値が知りたかったりすると公式が必要な場合もありますが、タップ電圧150Vにつき二次側電圧100V±2.5V、または300Vにつき100±5V変化すると覚えて問題ないと思います。
定格電流が200Vであった場合は、1タップで100Vの変化量を2倍しましょう。以下の表を参考にしてください。
定格電圧 | |||
1タップ変化量 | 1タップ昇降 | 100V | 200V |
150Vの場合 | 6,600→6,750 | 2.5V降圧 | 5V降圧 |
6,600→6,450 | 2.5V昇圧 | 5V昇圧 | |
300Vの場合 | 6,600→6,900 | 5V降圧 | 10V降圧 |
6,600→6,300 | 5V昇圧 | 10V昇圧 |
これは理論上だけの話ではなく、実際の変圧器でタップを変更し二次側電圧を測った場合でも、2.5Vや5Vといった電圧の変化が見られます。公式を使った計算は少々難しいですが、電気工事の世界ではこのように覚えているので、大まかな数値でいいのであれば、計算は必要としていません。
過去問題
では、実際に出た過去問題を一度見てみましょう。

先ほどの公式に当てはめて計算すると、解9.5Vとなります。解答欄に一番近い数字は10Vなので、10V昇圧が正解となります。解答欄によっては計算が必要ない場合もあるので、ぜひ覚えておきましょう。