VCTって?簡単な仕組みの解説
VCTは「計器用変成器」や「電力需給用計器用変成器」と呼ばれるもので、高圧の電力量を測るために使用される機器がVCTです。
低圧受電では、受電した電気をそのままメーターへと配線できますが、高圧受電(6,600V)ではそれができないため、VCTを介して電力量を測定します。
VCTは、VT:計器用変圧器とCT:計器用変流器(変成器)を一体化した装置です。VTでメーターを動かすための電気を高圧から低圧に変圧し、電力量をメーターが測定するために、変成器が電流を変流する仕組みになっています。
- メーター「高圧じゃあ動けんし測れませんて〜」
- VCT「おっしゃ任せとけ!変圧したから電気きたべ?」
- メーター「キタキタ!でも高圧電流測れませんよぉ」
- VCT「変流してやっから自分で計算せえ!」
みたいな感じです。
VCTの設置場所と電柱での役割:持ち主は?
VCTは主に電柱上やキュービクル内に設置されます。SOGやPASといった高圧引込に使用される機器より、電力会社側に取り付けられるため、持ち主は電力会社となります。ちなみに、低圧受電の電力量メーターも電力会社の持ち物です。
電柱上
電柱にVCTが取り付けられる場合は架空引込方式が採用されています。電柱の一番上に電線が張られ、その下にVCT、次にPAS、そしてキュービクルや借室に電気を運ぶ高圧ケーブル、という流れが最近では(2025年時点)一般的です。※PASとVCTの位置はよく前後します。
また、VCTが電柱に取り付けられている場合は、電力量メーターも電柱に取り付けられています。メーターの取り付け位置は、視認しやすい高さ、地上から1.8〜2.2mとされています。
最近のコンビニではこの引込方式が多く、それほど場所をとらない小型の屋外キュービクルが多い印象です。
キュービクル内
キュービクル内にVCTが取り付けられる場合は、高圧ケーブル→VCT→UGSまたはLBSもしくは両方→変圧器やコンデンサなどの機器、といった順に接続されていきます。※VCTの位置は開閉器と前後しやすいです。
キュービクル内には鉄骨が張り巡らされているので、吊り上げる、または棚に置くように取り付ける方法がとられます。VCTから出てくるケーブルが高圧線に触れないよう鉄骨を這わし、板材に取り付けられたメーターまで配線されます。
関連機器との関係
VCTはあくまで電気量メーターのための機器であるので、その前後には何かしらの機器が必ずついてきます。VCTとの組み合わせとして一般的であるPASとSOGについて解説します。
PAS:気中負荷開閉器
先ほどから出てきていたPASは「Pole Air Switch」の頭文字をとってパスと呼ぶ、電柱に取り付けられる気中負荷開閉器です。PAS本体に特別な能力は特になく、開閉器として回路の接続・遮断が唯一の役割と言えます。
VCTとともに高圧受電設備の重要な機器の一つとして、運営者も実際に何台も取り付けてきたのですが、法的な設置義務はありません。
しかし、高圧受電を受ける設備では定期的なメンテナンスのほか、高圧ケーブルの絶縁破壊による地絡、機器の劣化や故障による短絡事故といった要因は拭いきれないものであるため、電力会社と自家設備の区分点を設けた方が安心かつ安全な電気設備となります。詳しくは以下の関連記事を。

SOG:PASの制御装置
SOGとは、SOG開閉器と言われ地絡・短絡電流を検知して開閉器(PAS)を操作する制御装置です。自家設備の破損などによる波及事故を防止したり、再閉路と呼ばれる送電による自家設備の破損を防止したりできる、頭の良い機器となります。
最近では、高圧受電に使用される開閉器の多くがSOG開閉器であるため、電柱(引込柱)にはVCTとSOG開閉器(PAS)の2台と合わせて、SOG制御装置・電力量メーターが取り付けられます。SOGについては以下にて詳しく。

VCTの電気記号と試験対策
VCTは高圧電気設備としてはレギュラー的立ち位置であるため、第一種電気工事士の試験問題にもなっています。また、実際に高圧需要家設備を示す図面でも登場するので、これから電気工事士として働く人や試験勉強をしている人にとってはぜひ知っていてほしい内容です。
電気記号
VCTは2024年の第一種電気工事士筆記試験、下期の単線図から出題されました。これまでを見ても出題回数が多いので覚えておいて損はありません。

VCTは本稿冒頭に解説したように、電力量メーターを動かすための変圧器が内蔵されています。丸が二つ重なったものは変圧器の電気記号です。またその下、丸の前に斜線が2本入ったものが変成器となるので、その二つが一つの四角に収められた記号がVCTの電気記号となります。
ちなみに、単線図①がPASで、その横にある地絡方向継電器がSOG制御装置といった形ですね。

試験対策:覚えておくべきポイント
VCT関連の問題は主に
- VCTの機能に関する出題
- 外観(他機器との混合)
- 単線図からの出題
の3つに分類されます。単線図は先ほど紹介した電気記号から派生する問題です。2023年の第一種電気工事士学科試験・午後の部には単線図から以下のように外観について出題されました。

VCTは高圧引込に使用される機器であるためか、同じく高圧引込に使用されるPASと比較されて出題されることが多いです。二つの特徴としては画像に記載した通りで、「PAS=開閉器」としっかり認識できていれば、ラッキー問題にできるでしょう。