自分の敷地内にある電柱を見て、『これ、もう少し端っこに動かせないのかな…』『邪魔で車が停めにくいんだよな…』とため息をついていませんか?
家を建てる時や土地を活用しようとする時、目の前にある電柱は本当に厄介な存在ですよね。
ネットで『電柱 移設 敷地内』と調べると、
- 『電力会社に言えば無料で動かせる』
- 『いやいや、何十万も自腹で払った』
という恐ろしい体験談の双方が飛び交っていて、「結局、うちはタダなの?有料なの?」と余計に混乱してしまった方も多いはずです。
ハッキリ言います。 電柱の移設は、決して不可能なことではありません。ただし、『無料になる明確な条件』と『有料になってしまうケース』には、現場のプロにしか分からない超具体的な境界線があります。
もし、その裏事情を知らないまま闇雲に電力会社やNTTへ電話してしまうと、本来ならタダで動かせたはずのケースなのに『自己都合なので工事費の一部を負担していただきます』と言われ、数十万円の損を出してしまうリスクすらあるのです。
この記事では、毎日現場で電柱と向き合う電気工事のプロが、電柱移設が『無料(タダ)』になるための具体的な交渉術と、知っておかないと後悔する『現場のリアルな工事手順やトラブル事例』を解説します。
そもそも、なぜ敷地内に電柱が建っているのか?
敷地内に電柱が建っているのにはいくつかのケースが考えられます。
- 旗竿地になっていて、奥の家に電線を引くため
- 道路と民地の境界が曖昧な時に建てた電柱がそのまま残っている
- 土地分割により、元の地主が建てた電柱が残っている
といった理由があると予想できます。基本的に、移設が”不可能”な電柱はほとんどありません。ただし、その電柱の持ち主が誰で、どのように使われているのか、といった状況によって、移設できる距離なども変わってきます。
「電力会社・NTT所有」移設申し出で無料になる条件とは?
有料だったり無料だったり、いろんな情報が出回っていますが、移設工事が”無料”となる条件というのは決まっています。
- 元々敷地内に建っていた場合(土地使用料が発生していない)
- 電線や通信線などが、民地上空を横断している場合
- 電柱の取り替え時期が近い(電力会社側ですでにリストアップされている)
もし住宅の前で電柱を取り替える工事があるとの知らせを受けた時はチャンスです。できる限り自分の希望を伝えて、生活しやすい位置に電柱を動かしてもらいましょう。
電柱の移設・移動が無料になった実体験
https://note.com/chisato_mama/n/ne61319a404a9
こちらのサイトでは貴重な実体験を掲載しています。注文住宅を購入したものの、「敷地外」の電柱が邪魔で駐車しにくい問題がありました。そのためこの方は、交通支障・電線の敷地内侵入といった理由から移設申請をしています。
こちら私の電気工事の経験上、「交通支障」だけでは自腹になってしまうケースが多いように感じています。しかし、今回は「電線の敷地上空の侵入」というパワーワードがあったことから、無料になったケースだと考えられます。
他にも、たまたま別の工事に合わせて電柱の建て替え工事が発生した際に、電柱位置の確認があり、希望に沿ってもらえるケースや土地を購入する前から電柱が敷地内に建っていた場合は自己負担なしで電柱位置の移動が可能となるでしょう。
では、移設が有料になってしまうケースは?
電気工事に関わるものとして少々心苦しいことではありますが、”自己都合”での移設は有料となるケースが多いようです。例えば、敷地侵入や電線の横断はないんだけれども・・
- 「玄関前に電柱があって見栄えが悪い」
- 「窓から電線が見えて景観を損ねている」
- 「電柱が邪魔で車を出し入れしにくい」
といったものです。電柱は電力会社やNTTの所有物ではありますが、公共物という認識が強いです。勝手に工事されることはあっても、明確に「これはダメなんじゃないの?」とクレームを入れられる事項がなければ、無料になることは難しいでしょう。
少々厄介なケースとして考えられるのが、現在敷地内にある電柱が過去に”敷地使用”の契約をしていて、その敷地使用料をもらっている場合です。これは
敷地使わせて欲しいんだよね。少しだけど毎年お金払うからさ。
いいですよ。
となっている状況で敷地内に電柱が建っているのであれば、電柱の移設または移動について”自己都合”の依頼となり、移設費用を請求される可能性があります。しかし、土地の所有者が変わって、契約を更新しなければその限りではありません。
撤去できる電柱は?
電柱って景観は損ねるし道路幅は狭くなるし、ぶっちゃけ無いに越したことはありません。電気工事を生業として生きている私から見ても、「電柱も電線も邪魔だよな・・」って心から感じています。電柱にぶつけて粉砕した初めての車のサイドミラーは今でも忘れられません。
電柱が撤去されるには、
- 電気の地中化
- 電気の供給先がなくなり不要となる
- 違うところに建て直す
都市部など電柱がないところでは、地中にケーブルを埋設し、所々地上に出された箇所で設備管理ができるように施工されています。しかし、こちらは個人が頼んでできるほどの規模ではありません。地中化は1kmの施工に1億円は平気でかかるため、行政が本気を出すレベルのエリアでなければ難しいでしょう。
ただ、もしこの記事を読んでいる方で、「敷地内にある”自分”の電柱を撤去したい」という方は、『電柱の撤去・移設はどうすればいい?プロが教える「失敗しない」判断基準』と題して電柱の撤去についてまとめた記事がありますので、参考にしてみてください。
移設する時の工事手順と期間
移設にあたって、依頼する側は特にすることはありません。
電力会社またはNTTの電柱の場合、公道から公道へ移設するにしても、敷地内から公道へ移設するにしても、行政への設備登録の変更申請や、工事会社への発注などなどの手続きがありますので、工事着工まで時間がかかってしまいます。
移設したい電柱の状況によっては、着工後の工事期間が長引いてしまうこともあります。肌感覚ではありますが、一般的に半年はかかっているかと思います。
ただ、新築を建てるような状況であれば、居住開始までに建物への電線を引く工事が発生するため、その期間までには工事が完了しているでしょう。ですので、電柱が気になった段階、または設計があらかた固まったタイミングで申請しておくといいですね。
電力会社・NTTに断られることも?
基本的に、移設の申し出を断られるなんてことは滅多に無いでしょう。ただ、
- 隣人との関係が悪く、電柱の場所が決まらない
- 電柱を公道に出すと、道路の規格を守れない
そのほかに、私設柱という可能性もあります。
実際に経験した移設トラブル〜電柱位置が決まらず依頼主が折れることに・・〜
ここで私が電柱移設の工事で経験したトラブルを紹介します。もし、あなたが電柱の移設を依頼しようとしているのであれば、事前に対処または相談できるようにちらっとでもいいので目を通してみてください。
注文住宅への送電期日に合わせて電柱を建て替える工事でのことです。

お客様の希望では、電柱を敷地正面の端っこに移設してほしいとの設計でしたので、希望の位置を掘削していました。すると使われている埋設物(確か上水管)が出てきてしまったため、希望の位置に建てられないことをお伝えして、電力会社とお客様で再協議する運びに。
お客様としては「これ以上敷地正面に寄ってきて欲しくない」との希望でしたので、お隣との境界の中心に電柱を建てることを伺いに行くも断固拒否されてしまったそうです。
結果的に、希望位置の反対側である既設電柱の右側に電柱を建てることとなりました。こちらは住宅が接近してしまうため、防犯上の懸念があったそうです。電柱を登るための足場ボルトを取り付けずに施工し、わずかながらでもお客様に協力できるよう勤めた現場です。
私設電柱の場合は?
私設電柱とは、その土地の方が自分で電柱を購入し敷地内に建てている電柱です。
一般住宅では滅多にありませんが、マンションや店舗・ビル、ゴルフ場や工場など電気をたくさん使う建物や敷地が広大なところでは、電線を引くために私設電柱を持っているところが多いです。
私設電柱である場合、電力会社やNTTの管理下にはないので、一般の電気工事業者への依頼が必要となります。設備変更などで電力会社等への相談や連絡は必要になりますが、電気工事業者が手続きしてくれる場合もありますので、それほど心配することはないでしょう。
工事の規模にもよりますが、私設電柱を移設する費用はざっくり50万円〜とみていいかと思います。
その土地を店舗や工場にしたい方へ
もし高圧供給となるのであれば、電力会社の移設工事と、高圧供給による需要家設備の工事のどちらもできる工事会社へ依頼できれば、打ち合わせや手続きなどを簡略化できるかもしれません。
移設にしろ、新設にしろ、電柱が伴う工事はまず「建柱」と呼ばれる工事が発生します。建柱から高圧供給についての費用帯や期間などをまとめた記事がありますので、そちらも参考にしてください。