高圧地中配線(FEP管路)における高圧ケーブル(6.6kV CVT)の通線(入線)作業は、一瞬の判断ミスや事前計算の怠りが「ケーブルシースの破断」「途中で噛んで動かなくなるロック事故(数百万円の引き直し損害)」に直結する緊張感の高い工程です。
許容張力および許容側圧の計算式、ハンドホール内でのアンカーボルト施工、金網ソックスと直接アイ固定の使い分け、入線潤滑剤の塗り方、「通線途中でケーブルがピタッと止まった時の緊急リカバリー手順」までを徹底解説します。
1. CVTケーブル通線における基本許容値
作業前にケーブルメーカー(住友電工、古河電工、フジクラ等)が指定する限界限界値を厳守します。
| 項目 | 許容限界値 | 施工時の注意事項・解説 |
| 許容曲げ半径 | ケーブル完成外径の 6倍 以上 (端末部・固定部は8〜10倍) | 管口(ベルマウス部)で急角度に折れ曲がらないよう、ガイドローラー(トリプルローラー)を設置する。 |
| 導体直接引張(アイ) | 7kg/m㎡(68.6 N/m㎡) | 導体(銅)に直接荷重をかける方法。例:CVT 60sq(180m㎡) ➔ 約 1,260 kg(12.3 kN) |
| 金網ソックス引張 | 被覆保持力制限(最大 700 kg) | シース(外皮)表面を摩擦で掴む方法。被覆の伸び・破断を防ぐため 700 kg(約6.8 kN)以下 に抑える。 |
| 許容側圧 | 300 kg/m (2.94 kN/m) | 曲がり部でケーブルが管内壁に押し付けられる力。超えると内部の絶縁体や遮蔽銅テープが潰れて変形する。 |
2. ハンドホール(HH)内でのアンカーボルト設置ノウハウ
ハンドホール(HH)内部には、ケーブル受金物(ラック・クリート)の固定や、通線用滑車(金車)を引っかけ引っ張り荷重を受けるためのアンカーボルトを設置します。
アンカーボルト施工の重要チェックポイント
| 施工項目 | 施工基準・選定材料 | 現場での注意点・解説 |
| ボルト材質 | SUS304 または SUS316(ステンレス) | 【材質鉄則】 メッキ品(ユニクロ・ドブメッキ)は絶対NG。常時高湿度・水没するハンドホール内では数年で錆びて脱落し、ケーブル脱落事故を引き起こします。 |
| アンカー種類 | ステンレス製めねじアンカー (グリップアンカー / ウェッジ式) | 金車用など巨大な引抜荷重(数kN以上)がかかる箇所は、母材の亀裂・破壊を防ぐため打込み深さを十分に確保する。 |
| 鉄筋探査と穿孔 | 電磁波レーダー等による事前探査 | プレキャストハンドホールの鉄筋を切断すると躯体強度が低下します。ハンマードリルでの穿孔時は鉄筋位置を避ける。 |
| 穿孔後の清掃 | ダストポンプ + ブラッシング(3回以上) | 孔内に粉じんが残っていると、アンカーの引き抜き強度が規定値の半分以下に低下します。ブロアーとブラシで粉じんを完全除去する。 |
| 管口からの離隔 | FEP管口から 300mm 〜 500mm 離す | ベルマウス直近にラック用アンカーを打つと、管から出てきたケーブルの曲げ半径(6倍以上)が確保できず、無理な屈曲がかかります。 |
【引っ張り用フックアンカーの注意】
通線時にウインチの引張用滑車(金車)を固定するためのフックアンカーを打つ場合、通線張力(最大700kg等)に耐えるせん断・引抜耐力計算を行ってください。壁面のコンクリートが脆い場合は、壁面貫通プレート(当て板)を裏から挟む補強を行います。
3. 許容張力の計算式と摩擦係数 $\mu$
管路長(L)と曲がり角度(θ)から通線に必要な引っ張り荷重(F)を算出します。
① 直線区間の張力計算
- F:引っ張り張力 (kg)
- mu:摩擦係数(FEP管 + 入線用潤滑剤使用時:μ = 0.15 〜 0.25)
- W:CVTケーブルの単位重量 (kg/m) (例:6.6kV CVT 60sq = 約 2.5 kg/m)
- L:管路長 (m)
② 曲がり区間がある場合の張力計算(キャップスタン効果)
- F1:曲がり部直前の張力 (kg) / F2:曲がり部通過後の張力 (kg)
- e:自然対数の底 (2.718・・・) / θ:曲がり角度(ラジアン:90°= 1.57 rad)
【通線方向の鉄則】
FEP管(μ = 0.2)で 90° の曲がりが2箇所ある場合、張力は直線の 約 1.8 倍 に増大します。曲がり部がウインチ側に近いほど全体張力を抑えられるため、「曲がりが多い側から引っ張る(送り側を直線にする)」のが鉄則です。
4. 引っ張り金具の比較と入線潤滑剤の施工
引っ張り金具(ソックス vs アイ加工)比較
| 項目 | 金網ソックス(ケーブルグリップ)方式 | 直接アイ加工(導体圧着アイ)方式 |
| 構造 | ケーブルシース表面を網目で挟み込む | シースを剥ぎ取り、導体に直接アイ金具を圧着 |
| 適用範囲 | 短尺区間(50m以内)・直線メイン | 長尺区間(100m超)・曲がり多発・高張力 |
| 許容荷重 | 最大 500 kg 〜 700 kg(シース保持力制限) | 最大 1,000 kg 以上(導体断面積制限) |
| メリット | 端末加工が不要で現場での着脱が迅速 | シースが引っ張られて捲れ上がる事故が起きない |
【配線時の必須パーツ:スイベル(よれ取り環)】
ウインチワイヤー ─── [ スイベル (回転継手) ] ─── [ 金網ソックス / アイ ] ─── CVTケーブル
※ スイベルを挟まない場合、ワイヤーの撚り戻り力でケーブルが回転し、管内でキンク(座屈)します。
入線用潤滑剤(ハイ・スリップ等)の塗り方
- 指定品: 日東電工「ハイ・スリップ」、ジェフコム「ウルトラスリップ」等の水溶性専用品を使用(油脂類・洗剤はシースを浸食するため不可)。
- 事前塗布(スポンジ通線): 通線前に潤滑剤を含ませたスポンジを呼び線で管内に往復させ、管壁全体に馴染ませておきます。
5. 【緊急対応】通線途中でケーブルが噛んだ(動かない)時のリカバリー手順
ウインチで引いている途中に張力計の数値が跳ね上がり、ケーブルがピタッと止まってしまった場合の現場対応手順です。
[張力急上昇・停止] ➔ 1. 即座にウインチ停止(無理引き厳禁)
➔ 2. 逆引き(手動バック)で噛み込み解除
➔ 3. 圧送ポンピングで追加潤滑剤を管内注入
➔ 4. 人力サポート(送り側の押し込み)併用で再引張
現場での3段階リカバリーステップ
ウインチのクラッチを外し、送り側(手元)から手動でケーブルを10cm〜20cm程度逆方向へ引き戻します。 管口や曲がり部でソックスの先端やシースの段差がFEP管の波付凹凸に引っかかっている場合、少し戻してケーブルを回転(ひねり)させると解除されます。
引っかかっている位置に向けて、FEP管の管口隙間からホースを取り付けた潤滑剤ポンプで高粘度潤滑剤を直接押し込みます。
ウインチの引き側だけでなく、送り側(ドラム側)に作業員を2名配置し、ケーブルを管内へ力強く押し込む(手送りサポート)ことで、初期静止摩擦抵抗を突破させます。
6. シース(外皮)の傷補修と引き直し判定基準
| 損傷状態 | 判定 | 補修・処置方法 |
| 浅い擦り傷 (黒色シース表面が削れた程度) | 補修可 | エタノール脱脂後、自己融着ブチルテープ(Scotch 23)半重ね2層 + 耐候性ビニルテープ(Scotch 33+)順巻きで保護。 |
| 深手の傷 (遮蔽銅テープが見えるが変形なし) | 条件付き補修可 | 施主監理員立ち会いのもと、高圧ケーブル用熱収縮補修スリーブ(3M製 Wrap Sleeve等)を被せ、トーチで加熱溶着。 |
| 遮蔽銅テープの破断・変形 または 絶縁体(白)の露出 | 補修不可(全却) | 即座にケーブル全尺引き直し(再施工)。 テープ補修を行っても、受電前の耐圧試験(10,350V)で確実に絶縁破壊を起こします。 |
7. 現場で実際に起きた事故・失敗事例
【失敗事例1:ハンドホールにドブメッキアンカーを打ち、数年後にラックが落破】
状況: ハンドホール内部のケーブル受金物(ラック)固定時、手元にあったスチール製(ドブメッキ)のアンカーボルトを打った。
結果: 常時浸水・高湿度となるハンドホール内で数年かけてボルトが重度腐食。台風時の増水でラックごとアングルが外れ、高圧CVTケーブルが垂れ下がり地絡短絡事故を引き起こした。
対策: ハンドホール内等の水没懸念箇所へ打つアンカー・ボルト類は、必ず**SUS304/SUS316(ステンレス)**を指定・使用する。
【失敗事例2:張力計を使わずに無理引きし、遮蔽銅テープが全断】
状況: 配管曲がりが多く抵抗が大きい現場で、荷重計(張力計)を取り付けずに大型ウインチで力任せに引っ張った。
結果: 受電前の耐圧試験(10,350V)で漏洩電流が跳ね上がり即パンク。解体調査したところ、管内曲がり部で引っ張られた遮蔽銅テープがズタズタに破断していた。
対策: ウインチ通線時は必ず「デジタル荷重計」を設置し、制限荷重(700kg以下)でアラーム設定して施工する。
8. 通線作業前・作業中 自主チェックリスト
- [ ] 事前計算: 許容張力および曲げ半径の計算(6倍以上)は完了しているか?
- [ ] HH内施工: アンカーボルトはSUS304/316(ステンレス)を使用し、穿孔清掃を行ったか?
- [ ] 資材確認: ケーブル専用入線潤滑剤(ハイ・スリップ等)は十分な量用意されているか?
- [ ] 器具装着: ワイヤーとソックス(アイ)の間に「スイベル(よれ取り)」が装着されているか?
- [ ] 管口保護: FEP管の両端にPVC製ベルマウスおよびガイドローラーが設置されているか?
- [ ] 荷重管理: ウインチに張力計がセットされ、制限荷重(700kg)で設定されているか?
- [ ] シース確認: 通線完了後、引き出されたケーブル全周に目立つ傷や凹みがないか目視確認したか?
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高圧ケーブルの通線計画・許容張力計算や、現場でのトラブルリカバリーができる高い施工管理能力を持った電気技術者は、建設・プラント業界において常に引っ張りだこの状態です。
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