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【現場マニュアル】PAS(SOG)の装柱基準・高圧引込柱(第1柱)の施工とトラブル防止策

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自家用電気工作物(6.6kV高圧受電)の責任分界点である1号柱(高圧引込柱)に設置されるPAS(高圧交流気中負荷開閉器)は、構内事故を地域一帯に広げないための「最後の砦」です。

本記事では、PAS本体の施工から負荷側のCVTケーブル屋外終端処理、使用するテープの具定品番・巻き方SOG制御装置内の端子台配線、さらには操作ロープの処理や積雪地帯(北海道等)での設置基準まで、現場の一次情報を網羅して解説します。

目次
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1. 1号柱におけるPASとCVTケーブルの施工フロー

1号柱におけるPASの二次側(負荷側)は、耐候性や機械的強度の観点からKIP電線の露出配線ではなく、「CVTケーブル(またはCVケーブル)+屋外終端処理(ケーブルヘッド)」で電柱を下ろし、地中配線やキュービクルへ引き込むのが標準施工です。

[送配電線] ➔ [PAS一次側] ➔ [PAS本体] ➔ [PAS負荷側] 
                                        ↓
                         【屋外終端処理キット(冷間収縮)】
                                        ↓
                         【CVTケーブル(電柱クリート固定)】
                                        ↓
                         [地中配線 または キュービクルへ]

CVTケーブル屋外終端処理の注意点

  • 冷間収縮型端末処理キットの選定: 3M製「ハイ-K-レジン(屋外用)」や住友電工製など、指定の屋外用終端キットを使用します。
  • ストレスコーンの位置決め: 遮蔽銅テープの処理位置からストレスコーンまでの寸法を正確に採寸し、電界集中による絶縁破壊を防ぎます。
  • 接地線の取り出し: 遮蔽銅テープに接続した半田レス接地線をまとめ、A種接地(10Ω以下)へ確実に接続します。

2. 端末処理・防水施工で使用する「テープ」の指定と巻き方の鉄則

屋外露出部やブッシング境界部、ケーブル終端処理で施工品質を左右するのが「テープ選定」と「巻き方」です。現場では役割の異なる2種類のテープを組み合わせて使用します。

① 自己融着ブチルゴムテープ(絶縁・防水層)

  • 代表的な指定品番:
    • スリーエム(3M):Scotch 23(ブチルゴム自己融着テープ)
    • 日東電工:No.15
    • 古河電工:ハイテックス

現場での巻き方(伸ばし率と半重ね)

テープを指で幅が約3/4〜1/2になるまで(約2倍に)グッと引っ張りながら、1/2(半重ね)で巻き進めます。引っ張ることでブチルゴムが加圧され、テープ同士が空気の隙間なく融着して一体の「ゴムの塊(完全防水・絶縁層)」になります。伸ばさずに巻くと融着せず、隙間から雨水が侵入します。

② 耐候性保護ビニルテープ(保護・防食層)

  • 代表的な指定品番:
    • スリーエム(3M):Scotch 33+(耐熱・耐寒・耐候性プレミアムビニルテープ)
    • 一般電工用高品質PVCテープ

現場での巻き方(下から上への順巻き): 自己融着テープは直射日光(紫外線)や機械的摩耗に弱いため、その上から保護テープを巻きます。 巻く方向は必ず「下から上へ(順巻き)」です。屋根の瓦と同じ原理で、上から垂れてくる雨水がテープの重ね目に引っかからず滑り落ちるようにするためです(上から下へ巻くと重ね目に水が溜まります)。

3. SOG制御装置(制御箱)の設置・端子台配線実務

SOG制御装置(制御箱)側は、コネクタ挿入式ではなく、10芯前後のキャブタイヤケーブルを皮むきして内部の端子台へ丸形圧着端子でネジ止めする構造が極めて一般的です。

[PAS本体側:防水マルチコネクタ] 
       │ (キャブタイヤケーブル)
       ▼
[SOG制御箱側:丸形圧着端子(R端子)で内部端子台(ネジ止め)へ接続]

参照:戸上電機製作所

① 設置高さ(通常地域 vs 北海道等の積雪地帯)

  • 標準地域の設置高さ: 地上 1.5m 〜 2.0m(作業員が目線〜胸の高さで試験器を接続し、メーター確認ができる高さ)。
  • 積雪地帯(北海道等)の設置高さ: 地上 2.0m 〜 2.5m(根雪や除雪による雪埋もれを防ぐため高めに設置。点検時は脚立やフック棒を使用)。

② 内部端子台の配線と「丸形圧着端子(R端子)」の鉄則

SOG制御箱の内部には1P〜10P程度の端子台(M3.5〜M4ネジ)が配置されており、PASからの電源(P1, P2)、地絡検出(Z1, Z2)、過電流検出(C1, C2等)の信号線を接続します。

圧着端子は必ず「丸形(R形)」を使用

先開型のY形端子は絶対に使用不可です。強風による電柱の振動や長期の温度変化でネジがわずかに緩んだ際、Y端子は抜け落ちて「地絡不動作」を引き起こします。穴の開いた丸形端子(R1.25-3.5やR1.25-4)を使用していれば、ネジが緩んでも脱落しません。

新品のSOGであれば、最初から端子が圧縮されているものがあります。必要に応じて端子の用意をしておきましょう。

圧着ペンチのダイス確認

圧着時は必ず「JIS適合の裸圧着端子用圧着工具」を使用し、ダイス記号(1.25)のマークが端子に正しく刻印されていることを確認します。

端子ネジの締め付けとトルク管理

端子台のネジ(樹脂ベース)は、締め不足による接触不良(発熱・信号異常)はもちろん、インパクトドライバー等で締めすぎると端子台の樹脂が割れます。手ドライバーで適性トルク(約0.8〜1.2 N·m)で確実に締め、赤ペンで増し締め確認のチェックマーク(合わせマーク)を付けます。

端子のネジは柔らかいです。適性トルクで締めなければ、簡単にネジ切れてしまうので注意してください。

4. PAS手動操作ロープ(開閉ロープ)の位置と処理

PAS本体から垂れ下がっている手動開閉用のロープ(一般に「赤:切」「緑または白:入」)の処理を怠ると、風で煽られて線路に巻き付いたり、第三者の悪戯による誤開放の原因になります。

① 操作ロープ先端の高さ

  • 地上高: 地上 2.0m 〜 2.5m の位置にロープ先端のリングがくるよう長さを調整します。
  • 目的: 通行人が手で直接引っ張れない高さを確保しつつ、緊急時や点検時には操作棒(フック棒)の先端を引っ掛けて引ける絶妙な高さにするためです。

② 電柱への固定(ロープホルダー・クリート処理)

ロープホルダー(ロープフック)の設置

電柱の地上高2.0m付近に、ステンレスバンド等で「ロープホルダー(クリート)」を固定します。

クリートへの巻き留め

ロープが風で大きく揺れないよう、ホルダーに「8の字」で巻き留めて保持します。ロープをきつく結び留めてしまうと、停電作業時や緊急時にフック棒で操作できなくなるため、「フック棒で下から引っ張ればスッと外れて操作できる留め方」にするのが現場のプロの技です。

5. PAS・SOG施工における各種基準一覧

項目施工基準値現場でのチェックポイント・解説
PAS本体地上高6.0m 以上敷地内の車両通行エリアでは6.5m以上を確保
SOG制御箱地上高1.5m〜2.0m
(積雪地:2.0m〜2.5m)
目線の高さで試験プラグ・指示計が確認できる位置
操作ロープ先端高2.0m〜2.5m第三者のイタズラ防止およびフック棒操作の限界高さ
水切りトラップ(S字)15cm〜20cm 下降SOG箱・端末部直前で垂れ下げ、雨水の浸水を防止
端子圧着規格丸形(R形)絶縁端子Y形端子は脱落リスクがあるため使用禁止
テープ施工自己融着2倍引き ➔ 保護ビニル下から上絶縁・防水と紫外線保護の役割分担を徹底

その他アーム位置などは、地域特性による材料の違いや他の装柱物によって随時変更しましょう。また、その地域の電力会社のルールなどに従うようにしてください。

6. 受電前(通電前)自主検査と電力会社立ち会い時のチェックポイント

施工完了後、電力会社(北海道電力ネットワーク、東京電力パワーグリッド等)との立ち会い受電までに以下の試運転・検査を完了させておきます。

① 高圧絶縁抵抗測定(2,000V / 5,000Vメガー)

  • PAS一括 − 大地間
    • PAS投入状態で測定
    • 実測値は20,000 MΩ(20 GΩ)以上
    • ∞が正常値。
  • CVTケーブル単体: 端末処理後、相間および対地間を測定。

② SOG連動試験(試験器:SOK-300等)

  1. SOG制御箱のテストプラグ(または試験端子)に試験器を接続。
  2. 最小動作電流試験: 整定値(例:0.2A)で正しくSOGが動作するか。
  3. 動作時間試験: 0.2秒整定に対し、規定時間内(0.16s〜0.24s)でPASがトリップするか。
  4. 手動開閉試験: フック棒で操作ロープ(切)を引っ張り、機構的に確実に開放されるか。

③ 接地抵抗測定

A種接地(PAS外箱・避雷器LA・CVT遮蔽銅テープ)

高圧機器にはA種接地工事を施します。10Ω以下にしなければならないため、土質によってはなかなか数値を出せない場合があります。接地が出ない時の対処方法を以下の記事で解説していますので、参考にしてください。

【現場実務】アース棒を打っても接地抵抗が下がらない原因と「現場の裏ワザ」5選

D種接地(SOG制御箱・取付金属架台)

D種接地100Ω以下なため、A種の接地極と共同にして省略できる場合があります。各種接地について詳しくまとめた記事がありますので、以下の内容を参考にしてください。

【完全ガイド】接地工事(A・B・C・D種)の施工基準・抵抗値・測定方法まとめ

7. 現場で実際にあった悲惨な施工失敗事例

【失敗事例1:SOG箱内部でY端子が脱落し「地絡不動作」】

状況: 施工業者が手元にあったY形圧着端子を使ってSOG箱内の10芯端子台を配線。

結果: 数年間の電柱の微振動でネジが緩み、Z1(地絡電圧信号線)のY端子がスッポリ脱落。構内ケーブル地絡事故が発生した際、SOGが事故を検出できず、電力会社の配線用遮断器が動作して波及事故(地域一帯の停電)に発展した。

訓え: 振動のある場所の端子台配線には、絶対に丸形(R形)端子を使用する。

【失敗事例2:ブチルテープを伸ばさずに巻いて雨水浸水】

状況: 新人作業員が自己融着テープ(Scotch 23)を通常のビニルテープのように引っぱらずにそのまま巻いて端末部を保護した。

結果: ブチルゴム同士が自己融着せず層間に隙間が残り、雨水が毛細管現象で浸入。冬場にその水が凍結・膨張(凍結融解)を繰り返し、春先に端末部から爆発地絡を起こした。

訓え: 自己融着テープは巾が半分になるまで引っぱって半重ねで巻く指導を徹底する。

【失敗事例3:積雪でSOG箱が雪に埋もれて過熱故障(北海道)】

状況: 本州の標準感覚(地上高1.2m)でSOG制御箱を電柱に取り付けた。

結果: 冬場に1.5mを超える豪雪となり、SOG箱がすっぽり雪の中に埋没。雪解け時の水分侵入と結露により内部基板が全損した。

訓え: 豪雪地帯では積雪深を計算に入れ、制御箱高さを2.0m〜2.5mへかさ上げする。

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この記事を書いた人

10年以上の電気工事経験のノウハウや知識を皆様に提供しています。
所有資格:第二種電気工事士・第一種電気工事士・1級電気工事施工管理技士

所属している北海道の電気工事会社『(株)佐々木電設』にて、高圧受電設備の更新や新設工事を承っております。ホームページからご連絡ください。
https://sasaki-dennsetsu.com/

また、私は電気工事に従事する仲間の技術習得や現場作業や電気学の知識・理解向上、キャリアアップを目的として当サイトを運営しています。

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