電気工事施工管理技士の第二次検定(旧実技試験)において、「品質管理」「工程管理」と並んで出題頻度が極めて高いテーマが「安全管理」です。
電気工事現場における安全管理では、労働安全衛生法や電気設備技術基準に基づき、高圧(6.6kV)感電事故防止、ハンドホール内での酸素欠乏・硫化水素中毒防止、公道掘削時の他埋設物(ガス・水道・弱電)破損防止など、具体的かつ技術的なリスクに対する予防措置を明記することが求められます。
本記事では、試験の性質上配慮すべき視点、高圧受電設備や地中配線工事を題材とした実戦記述サンプル2選、評価されにくい表現と評価につながりやすい表現の対比、安全管理で押さえるべき具体的数値・専門用語を徹底解説します。
1. 「安全管理」の記述で求められる視点と論理構成
なお、第二次検定における詳細な採点基準や配点は試験実施機関から公表されていません。しかし、施工管理技士に求められる現場統括・労働災害防止能力の観点から、記述においては以下の3つのステップが整合性を持って書かれていることが重視されると考えられます。
どのような工事環境(高圧活線近接、酸欠危険場所、重機掘削等)で、どんな労働災害が懸念されたか。
労働災害を防止するため、法規制・数値基準・安全防具・作業手順(検電・接地・換気等)でどう対策したか。
安全対策を徹頭徹尾履行した結果、無事故・無災害で工事を完了できたか。
2. 【記述例①】高圧受電設備(キュービクル)更新における感電事故防止
高圧受電設備(キュービクル・PAS)の改修工事において、高圧(6.6kV)充電部への近接作業時における感電・ショート事故防止を題材とした記述サンプルです。
現場状況・工事概要の設定サンプル
- 工事名: 〇〇工場 構内高圧受電設備(PAS・トランス)改修工事
- 工事概要: 6.6kV高圧受電設備(トランス・VCB)の撤去・据付および停電受電切替作業
- 立場: 現場代理人(施工管理担当)
実戦記述サンプル(解答用紙の記入構成イメージ)
【1. 特に留意した安全管理上の課題】
構内高圧受電設備の更新作業において、仮設送電時や系統切替時における6.6kV高圧充電部への誤接触による高圧感電事故、および作業員の誤操作や残留電荷によるアーク短絡事故の防止が最重要の安全管理課題であった。
【2. 検討した理由および実施した技術的対策】
高圧感電事故を未然に防止するため、作業前に特別教育修了者であることを確認し、高圧用絶縁保護具(絶縁用保護具・絶縁手袋等)の着用を義務付けた。停電作業開始時は、検電器を用いて無圧確認を行った後、確実に放電を実施し、誤送電に備えて電源側に短絡接地器具(仮接地)を装着した。また、受電盤内の隣接する高圧充電部には高圧絶縁シート(絶縁防護具)を装着して養生を徹底した。さらに、停電区間と充電区間の境界に「充電中・立ち入り禁止」の標識および区画ロープを設置し、作業開始前にKY(危険予知)活動を実施して全員で安全手順を唱和・確認した。
【3. 実施した結果および評価】
計画した安全防護手順および検電・短絡接地の工程を確実に実施・監視した結果、作業員の感電および誤操作による設備事故を一切発生させることなく、全工程を完全無災害で完了できた。
状況に応じて、「必要な道具で安全対策を講じた」というのが肝です。今回の状況では、”もし誤って高圧が送電されてしまったら・・”を想定されています。
3. 【記述例②】ハンドホール内地中配線工事における酸素欠乏・硫化水素中毒防止
長年閉塞されていた地中ハンドホール(HH)内でのCVTケーブル通線・接続作業における酸素欠乏・硫化水素中毒防止を題材とした記述サンプルです。
現場状況・工事概要の設定サンプル
- 工事名: 〇〇施設 構内高圧地中電線路(FEP管・CVTケーブル)敷設工事
- 工事概要: 既設地中ハンドホール内への高圧CVTケーブル通線、ラック固定、および管口止水施工
- 立場: 工事責任者(施工管理担当)
実戦記述サンプル(解答用紙の記入構成イメージ)
【1. 特に留意した安全管理上の課題】
深さ1.8mの地中ハンドホール内部でのケーブル通線・ラック固定作業において、ヘドロや有機物の分解に伴う酸素欠乏(酸素濃度18%未満)および硫化水素ガスの発生による作業員の窒息・中毒事故防止が最重要の安全課題であった。
【2. 検討した理由および実施した技術的対策】
労働安全衛生規則(酸素欠乏症等防止規則)に基づき、ハンドホールマンホール蓋開放後、入坑前に複合型ガス測定器を用いて内部の酸素濃度(18%以上)および硫化水素濃度(10ppm以下)を測定した。入坑中はポータブル送風機を設置して常時強制換気を実施し、作業中も連続自動測定器により空気環境を継続監視した。また、作業者を「酸素欠乏危険作業特別教育」修了者に限定し、地上部に誘導員(作業主任者)を常駐させて入坑者との定時連絡と三脚・救出用ハーネスの事前手配を徹底した。
【3. 実施した結果および評価】
徹底した事前測定と常時強制換気を履行したことで、入坑中の酸素濃度は常に20.9%前後を維持した。有害ガスの滞留や体調不良者の発生もなく、ハンドホール内作業を安全かつ無災害で終了できた。
こちらも記述例①と同様に、作業開始前の安全確認と、もしもの時の備えが万全であったことをアピールしています。無理に「18%以下の現場を改善して作業した」というネタを仕込まなくても問題ないでしょう。
4. 安全管理で評価されにくい表現 vs 評価につながりやすい表現
採点基準は非公表ですが、施工管理技士の記述試験としては、一般的な精神論ではなく法規制や具体的設備を用いた安全対策が評価されやすいと考えられます。
| 評価されにくい表現(曖昧・精神論) | 評価につながりやすい表現(技術的・客観的) | 記述のポイント |
| 「ケガをしないように注意した」 | 検電器による無圧確認後、短絡接地器具を装着し、誤送電による感電を防止した | 精神論ではなく、法規制・電気安全の具体的手段を書く。 |
| 「ヘルメットを被るよう声をかけた」 | 高圧用絶縁保護具(絶縁手袋・長靴等)の着用を義務付け、特別教育修了者を配置した | 保護具の種類や作業資格を明確に記述する。 |
| 「マンホールの中の空気が悪そうだった」 | 複合型ガス測定器で酸素濃度(18%以上)および硫化水素濃度(10ppm以下)を確認した | 感覚ではなく、法定数値基準(18%、10ppm)を明記する。 |
| 「安全第一で作業した」 | 作業開始前にTKY(危険予知)活動を実施し、危険ポイントと対策を全員で共有した | 安全活動の具体的手法(KY活動、作業主任者配置等)を示す。 |
5. 安全管理の記述で役立つ「法定数値・専門用語」一覧
記述の具体性と客観性を高めるために、以下の法令数値や専門用語を適切に盛り込むことが効果的です。
- 高圧感電対策
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検電器、無圧確認、残留電荷放電、短絡接地器具(仮接地)、高圧絶縁防護具(シート・管)、高圧特別教育(安全衛生特別教育規則第36条)。
- 酸素欠乏・中毒対策
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酸素欠乏症等防止規則、酸素濃度(18%以上)、硫化水素濃度(10ppm以下)、複合型ガス測定器、ポータブル送風機(常時強制換気)、酸素欠乏危険作業主任者。
- 重機・掘削対策
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試掘(手掘り)、他埋設物(ガス・水道・弱電)、立会い確認、車両系建設機械作業計画、誘導員の配置、作業区画(立入禁止ロープ・単管バリケード)。
採点基準が明確ではない以上、この記事もあくまで”減点される要因”を排除する方法を掲載しているに過ぎません。自分の体験を記述に落とし込むには、プロの目を通した方が間違いなく合格に近づきます。
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