「規定のアース棒を打ち込んだのに、テスターを当てたら全く抵抗値が下がらない…」
現場でアース棒(接地極)の施工をしていると、岩盤や砂利地盤、あるいは極度に乾燥した土地などで必ずこの壁にぶつかります。
「もう1本並列で打ちたいが、敷地が狭くて2mも離せない」
「ハンマーで叩きすぎてアース棒の頭が潰れ、連結ネジが入らなくなった」
「低減剤を買ってきたが、どれを選べばいいか分からない」
本記事では、教科書通りの基本ルールだけでなく、現場で実際に使われている泥臭い工夫や裏ワザ、トラブル防止のノウハウを深掘りして解説します!
1. 現場の現実:アース棒を叩く前に知っておくべきトラブル防止
アース棒の施工で初心者がやりがちなのが、大ハンマー(セットハンマー)で直接頭を叩いてしまい、頭部のネジ山や差し込み口を潰してしまう失敗です。頭が潰れると、連結用のアース棒が入らなくなります。
① 電動ハンマードリル(SDS-max / 六角軸)+アダプターの必須化
深打ち(連結)をする場合、手作業のハンマー打撃では体力が持つだけでなく、垂直に刺さらず折れ曲がる原因になります。
現場ではマキタやHiKOKIなどの電動ハンマーに「アース棒打ち込み用アダプター(ソケット)」を装着して打つのが鉄則です。
石や岩盤などにぶつかっている状態で撃打ち続けると、打点が熱を持ってしまいアース棒が潰れてしまいます。ソケットから抜けなくなるので、だめだぁ・・というときは早々に諦めることが肝心です。
② 打込用キャップ(プロテクター)の装着
手で叩く場合やアダプターを使用する場合でも、アース棒の頭部に「打込キャップ」を被せて保護します。これによりネジ山の変形を防ぎ、スムーズに2本目・3本目の連結が可能になります。
2. 敷地が狭くて「2m離して並列打ち」ができない時の現場テク
電技の基本では「アース棒同士の間隔は棒の長さ(約1.5m〜2m)以上離す」とされています。これは電位の干渉(集合効果)を防ぐためですが、現実の現場(狭い犬走りや盤の裏)で2mも離せるスペースはまずありません。
スペースがない場所で抵抗値を下げるための現場テクニックです。
テク①:「斜め打ち」で物理距離を稼ぐ
地表の打撃ポイントは30cm〜50cm程度しか離せなくても、アース棒を外側に向かって「ハの字(斜め30度〜45度)」に打ち込む方法です。地中の先端同士の距離(離隔)を無理やり確保できるため、電位の干渉を減らすことができます。
表層を掘削せずに打ち込む場合、埋設物の破損に注意してください。引き込みの水道管などは、柔らかい樹脂製のものを使用している場合が多いので、運よく(?)ぶつかると一瞬で破損させてしまします。
テク②:「放射状」にアース線を伸ばす
盤や接地面を中心に、東・西・南・北の異なる方向へアース線を伸ばし、それぞれの先でアース棒を打ちます。直列に並べるよりも電位干渉を受けにくく、狭い敷地を有効活用できます。
3. アース棒でダメなら「建築構造体(鉄骨・柱)」を利用する
アース棒を何本打っても100Ωや10Ωが出ない場合、無理にアース棒にこだわる必要はありません。建物の「鉄骨柱」や「地中コンクリート基礎」を接地極として利用する方法(電気設備技術基準解釈 第18条)があります。
鉄骨接地の適用条件と注意点
- 構造:地中に埋設された鉄骨基礎や、大規模な鉄筋コンクリート構造物であること。
- 抵抗値の低さ:巨大な鉄骨や基礎コンクリートは地中との接触面積が広いため、アース棒とは比較にならないほど低い抵抗値(数Ω以下)が一瞬で出ます。
- 確認方法:鉄骨の塗装をグラインダーで削り、素地を出した状態で接地抵抗を測定します。十分に低い値(規定値以下)が出れば、そこに接地端子をボルト固定(ボンディング)することでC種・D種接地として認められます。
4. 接地抵抗低減剤の「選び方」と施工時の落とし穴
「とりあえずアース低減剤を流し込めば下がるだろう」と適当に使うと、数年後に効果がなくなってトラブルになります。低減剤には大きく分けて2つのタイプがあります。
| 低減剤のタイプ | 主成分 | 特徴と現場での使い分け |
| セメント系(固化型) | 導電性ポゾラン・セメント等 | 【恒久型】 水で練ると硬化する。雨水で流出せず、一度施工すれば長期間効果が持続する。岩盤・砂利地盤に最適。 |
| ベントナイト系(吸湿型) | 粘土質(モンモリロナイト) | 【保水型】 施工が楽だが、乾燥すると収縮して隙間ができたり、地下水で流出するリスクがある。 |
他にも、最近はジェル状のものもあります。現場の土質や届かせたい数値によって柔軟に対応できるよう準備しておくといいでしょう。
現場での施工手順のコツ
- アース棒の周りを直径10〜15cm、深さ1mほど掘削する。
- アース棒を立て、水でドロドロに練ったセメント系低減剤を隙間なく流し込む。
- 低減剤がアース棒と土壌の間を「架け橋」のように埋めることで、接触面積が数百倍に広がり、抵抗値が数分の1に激減します。
5. アーステスター(接地抵抗計)測定時のトラブルシューティング
最後に、現場で「測定値が安定しない・おかしい」ときのチェックポイントです。
簡易測定(2極法)の引っ掛け先の選び方
補助極(P極・C極)が打てない舗装道路やビル内では、既設のアースを利用する「2極法(簡易測定)」を行います。
- ベストな引っ掛け先:分電盤内の「既設B種接地」または「構造体鉄骨」
- NGな引っ掛け先:塗装された金属パイプ、アルマイト処理されたアルミサッシ(絶縁被膜があるため測定不能または異常値になる)
6. まとめ:現場の状況に合わせた柔軟なアプローチを!
- 打撃:電動ハンマー+アダプターと打込キャップでアース棒の頭部潰れを防ぐ!
- 狭小地:2m離せない時は「斜め打ち(ハの字)」で地中の離隔を稼ぐ!
- 出ない時:無理に打たず「鉄骨接地(第18条)」や「セメント系低減剤」へ切り替える!
基本ルールを頭に入れた上で、現場の土地や建物の状況に応じた柔軟な施工選択を行いましょう。
💡 接地工事全体の基準やA〜D種の違いはこちら
各接地種別(A・B・C・D種)の詳しい施工基準や漏電遮断器による緩和規定、測定方法などの全体像は、以下のまとめガイドで網羅しています。