高圧地中配線工事において、ケーブルの引き込み・接続・分岐点となるハンドホール(HH:地中用小型マンホール)の施工は、受電設備の長期的な信頼性を左右する重要工程です。
ケーブルの許容曲げ半径から逆算するハンドホールの寸法選定、プレキャスト製品の据付・底板砕石処理、管路流入部の完全止水(防水グラウト・止水プラグ)および防鼠(ネズミ対策)施工、さらには水没・ヘドロ現場での安全作業手順まで、現場で必要な実務ノウハウを徹底解説します。
1. ハンドホール(HH)のサイズ選定基準と「曲げ半径逆算」

ハンドホールの内寸サイズ(幅 × 奥行 × 深さ)は、納めるFEP管の管数だけでなく、内部でCVTケーブルを湾曲・ラック固定するための「許容曲げ半径(ケーブル外径の6〜8倍以上)」から逆算して選定します。
① CVTケーブルサイズ別 ハンドホール選定の目安表
| 敷設ケーブル(6.6kV) | CVT外径 | 最小必要曲げ半径 (R) | 推奨ハンドホール内寸 (W×D×H) | 適用現場の目安 |
| CVT 38 sq | 約 34 mm | 204 mm 以上 | 600 × 600 × 600 mm (小型) | 直線区間の引き込み・通過点 |
| CVT 60 sq | 約 38 mm | 228 mm 以上 | 900 × 900 × 900 mm (中型) | 曲がり部(90°)またはラック固定箇所 |
| CVT 100 sq | 約 45 mm | 270 mm 以上 | 900 × 1200 × 1000 mm (中型〜大型) | ケーブル中間接続(直線接続部)併設点 |
| CVT 150/200 sq | 約 50〜55 mm | 300〜330 mm 以上 | 1200 × 1200 × 1200 mm (大型) | 複数管路集中・大口径引き込み点 |
② 壁面穿孔(ノックアウト)と管離隔の鉄則
管と管の離隔
FEP管(FEP 80等)を複数本平行に挿入する場合、管の外壁どうしは最低 50mm 以上離します。密着させると端部のベルマウスが取付けられず、充填する防水モルタルが隙間に回り込みません。
コーナー(壁端)からの離隔
ハンドホール内壁の角から管の中心までは150mm 以上離し、ケーブルの湾曲スペースを確保します。
2. プレキャストハンドホールの据付と「底部水抜き処理」
屋外のハンドホール施工では、工場製品であるプレキャストコンクリート製(組立て式または一体型)を使用するのが一般的です。
プレキャスト据付と底部砕石工の施工比較

| 施工工程 | 施工基準・使用材料 | 現場での注意点・解説 |
| 床つくり掘削 | ハンドホール底面より 200mm 深く掘削 | 躯体重量による不当沈下を防ぐため、掘削底をランマーで強固に締め固める。 |
| 水抜き砕石層 | 単粒度砕石(S-25等)または RC-40(厚さ150〜200mm) | 【水抜き鉄則】 底部をコンクリートで完全に密閉してはいけません。浸入した雨水を自然地下浸透させるため、底板に水抜き穴を設け、下に砕石層を敷きます。 |
| 目詰まり防止シート | 透水性不織布(ジオテキスタイル等) | 砕石層の上に透水シートを敷き、下の土砂が水抜き穴からハンドホール内に逆流(泥湧き)するのを防止します。 |
| 据付水平出し | 無収縮モモルタル / コマ(レベル調整用) | 水準器で前後左右の水平を確認。傾いたまま設置すると、蓋(鉄蓋)の受枠とアスファルト路面との高さが合わなくなります。 |
3. 管路流入部の「完全止水」および「防鼠(ネズミ対策)」施工
ハンドホールとFEP管の隙間、およびFEP管内部からの「水」と「小動物」の侵入を防ぐ処理は、キュービクルの水没事故やケーブル咬害事故を防ぐ最重要ラインです。
止水・防鼠資材の施工区分と使い分け

| 施工箇所 | 指定資材・処理方法 | 現場での施工ノウハウ |
| 壁とFEP管の隙間 | 無収縮防水モルタル / 急結防水グラウト | ノックアウト穴とFEP管の隙間に奥までしっかり充填。乾燥収縮によるクラック(ひび割れ)を防ぐため無収縮タイプを使用。 |
| FEP管内(小動物対策) | 防鼠型不乾性パテ(ネオシール B-3 / タフシール) | ネズミが嫌う辛味成分(カプサイシン入り)や金属粉混入パテを使用。単なるエアコンパテはネズミに食い破られます。 |
| FEP管内(水頭圧対策) | 機械式止水プラグ または 可とう性発泡ウレタン止水材 | 地下水位が高く水圧(水頭圧)がかかる現場では、パテだと押し出されます。ゴムリングをボルトで圧縮膨張させる止水プラグ(防水メカシール)を使用。 |
| メッシュ防鼠 | SUS304製 ステンレスメッシュ網 | 大口径管でパテが落ち込む場合は、奥にステンレスメッシュを詰め込んでから防鼠パテを厚さ 50mm 以上充填します。 |
4. 【泥臭い現場実務】水没・ヘドロだらけのハンドホールでの作業手順
長年放置されたハンドホールや、地下水位の高い現場では、蓋を開けた瞬間に「開口部まで泥水が満タン」「底に粘土状のヘドロが堆積」しているのが現実です。
[開口・換気] ➔ [ガス測定(酸素・硫化水素)] ➔ [水中ポンプ排水] ➔ [ヘドロ掻き出し] ➔ [清掃・通線作業]
① 水中ポンプによる排水と「ヘドロ処理」
底のヘドロを吸い込まない高さ制限
水中ポンプ(ツルミポンプ等)を底まで直置きすると、底のヘドロを吸い込んで一瞬でインペラ(羽)がロックして故障します。ロープで吊り下げて底から 20cm 上で保持して澄み水を排出します。
ヘドロの泥浚い(スカッパー・柄付きヒシャク)
排水後、底に溜まった泥・ネズミの死骸・腐敗スラッジは、柄付きヒシャクやスコップでバケツに掻き出します。このヘドロを敷地内にそのままぶちまけると臭気クレームになるため、土のう袋に回収して産業廃棄物(汚泥)として処理します。
② 【命に関わるリスク】酸欠・硫化水素中毒対策
ヘドロが堆積した密閉ハンドホール内部は、有機物の腐敗により酸素欠乏(酸素濃度 18% 未満)および硫化水素(H2S)の発生リスクが極めて高い危険作業場所です。
【安全施工の3大鉄則】
1. 内部へ降りる前に、必ず「複合型ガス測定器」を差し込んで 酸素・硫化水素濃度 を測定する。
2. 測定値が安全範囲内であっても、「ポータブルファン(送風機)」で常時外気を送り込み強制換気する。
3. 地上作業員を1名監視員として常駐させ、内部作業者は「ハーネス + 救出用ロープ」を装着する。
5. 現場で実際に起きた事故・失敗事例
【失敗事例1:FEP管内の止水パテ不備で、地下水がキュービクル内に噴出】
状況: 屋外ハンドホールから室内キュービクルへ通じるFEP管の管口に、普通のエアコン用不乾性パテを薄く詰めただけで工事を完了した。
結果: 大雨でハンドホールが水没した際、水頭圧(水圧)に耐えきれずパテが押し出され、FEP管を通って地下水がキュービクル内部の底板隙間から噴出。受電中の高圧トランス足元が冠水し、地絡爆発事故を引き起こした。
対策: キュービクルへ直結する高圧管路には、必ず「水圧対応の機械式止水プラグ」または「耐圧発泡ウレタン止水材」を施工する。
【失敗事例2:防鼠施工を怠り、クマネズミがCVTケーブルを咬害】
状況: ハンドホール内の管口に防鼠パテを塗らず、ウレタンフォーム(防鼠成分なし)だけで塞いで放置した。
結果: 暖を求めたクマネズミがウレタンを食い破って侵入。CVTケーブルの黒色ビニルシースおよび遮蔽銅テープをガリガリと噛みちぎり、銅テープが断線。年時点検の絶縁抵抗測定で漏電が発覚した。
対策: 防鼠施工には必ずカプサイシン入り防鼠パテ(タフシール等)を使用し、奥にステンレスメッシュを併用する。
6. 施工管理用 自主チェックリスト
- [ ] 寸法選定: 敷設ケーブルの許容曲げ半径(外径の6倍以上)がHH内部で保たれているか?
- [ ] 底部水抜き: 底板下に砕石層(150mm以上)および透水不織布シートが正しく敷かれているか?
- [ ] 管口処理: FEP管端部にPVC製ベルマウスが確実に装着されているか?
- [ ] 止水施工: 壁面隙間に無収縮防水モルタル、管内部に止水プラグ/防水パテが密着充填されているか?
- [ ] 防鼠施工: カプサイシン入り防鼠パテ(またはSUSメッシュ併用)で開口が完全に閉塞されているか?
- [ ] 安全衛生: 酸素・硫化水素ガス測定を実施し、送風機(ポータブルファン)で換気しながら作業したか?
【電気技術者のためのキャリア・市場価値調査レポート】
地中配線工事やハンドホールの止水・防鼠管理、酸欠危険作業の安全管理まで見通せる技術力を持った電気技術者は、建設・ビルメンテナンス業界において常に高い評価を受けています。
現役の電気工事士・電気主任技術者を対象とした「最新の年収相場」や「保有資格に応じた市場価値データ」をまとめたレポートを以下で公開しています。ご自身のスキルの適正評価を確認したい方はぜひ参考にしてください。