変圧器二次側の接地はB種接地工事を施す、その理由は?
変圧器の接地は、電気設備の安全性を確保するために非常に重要な要素です。変圧器の接地に関する一般的な情報を以下に説明します。
変圧器は、電圧を変換するための電気機器であり、一般的には高い電圧を低い電圧に変換するために使用されます。これにより、6,600Vの高圧を100/200Vに変換することで、一般家庭に電力を送電することが可能になります。
変圧器の接地は、主に以下の理由から重要です。
安全性
変圧器は高い電圧を扱うため高圧受電設備に該当します。誤った操作や故障によって発生する、漏れ電流が道ゆく人や他の設備に影響を与えないよう、正しく接地されている必要があります。また、高圧電圧が、変圧器二次側の低圧に漏電すると、家電の故障や電気火災といった危険性もあるため、接地は非常に重要な役割を持っています。
故障対策
変圧器本体の故障だけでなく、他の設備からの漏れ電流や雷によるサージから変圧器を保護する役割も持っています。適切な接地が行われていれば、漏れた電流が地中に逃すことで、供給支障や変圧器の故障を防止しています。
変圧器の接地方法
直接接地
変圧器の筐体や基盤を地面に直接接続する方法です。この場合、漏れた電流は地中に逃げることで安全性が確保されます。地中への電流逃がしは、導電性のある銅を使用した接地棒などを深く埋め込む方法が一般的です。
間接接地
変圧器の筐体を地面に直接接続せずに、建物の主接地線や配電線路と接続する方法です。複数の接地極(漏れ電流を逃すために打ち込まれたもの)と共有するため接地抵抗が少ないことがメリットと言えますが、直接接地より他の設備に波及するリスクが高まります。そのため、直接接地と間接接地の両方を設置することが最も効果的な接地方法と言えるでしょう。
接地工事を施す変圧器は?電気設備技術基準の解釈第24条
日本国内の電気設備は、電気設備技術基準に基づいて施工されています。高圧変圧器の設置については24条に記されており、以下のように定められています。
第24条 高圧電路又は特別高圧電路と低圧電路とを結合する変圧器には、次の各号によりB種接地工事を施すこと。
次のいずれかの箇所に接地工事を施すこと。(関連省令第10条)
- イ 低圧側の中性点
- ロ 低圧電路の使用電圧が300V以下の場合において、接地工事を低圧側の中性点に施し難いときは、低圧側の1端子
- ハ 低圧電路が非接地である場合においては、高圧巻線又は特別高圧巻線と低圧巻線との間に設けた金属製の混触防止板
上記3点が高圧変圧器の接地の基本です。
B種接地が必要ない変圧器
次の各号に掲げる変圧器を施設する場合は、前項の規定によらないことができる。
一 鉄道又は軌道の信号用変圧器
二 電気炉又は電気ボイラーその他の常に電路の一部を大地から絶縁せずに使用する負荷に電気を供給する専用の変圧器
上記は第1種電気工事の学科試験でよく出る問題ですので、覚えておくと良いでしょう。
接地の種類と役割
以下は3種類の接地方法についてまとめたものです。
接地方法 | 説明 | 主な用途 | 特典 |
接地機器 | 電気機器の外部金属部分を接地する方法。 | 家電製品、オフィス機器、産業機器など。 | 1. 感電事故を防ぎます。 2. 機器の故障を防ぎます。 |
接地系統 | 電気系統全体を接地する方法。 | 電力供給系統、変電所、大規模な施設の電気設備。 | 1. 漏電や過電流を防ぎます。 2. 系統の安定性を考慮します。 |
中立点接地 | 変圧器や発電機内の性質点を接地する方法。 | 高電圧の変圧器、発電機、大規模な施設や工場。 | 1. 系統の安定性を認める。 2. 異常電流の流れを制御する。 |
このテーブルは、3つの接地方法の基本的な特徴や用途、メリットを考えて示しています。それぞれの接地方法は、使用環境や目的に応じて選択する必要があります。
変圧器二次側の接地をとる方法
以下は電気設備技術基準の解釈第24条の一節です。
”変圧器が中性点接地式高圧電線路と低圧電路とを結合するものである場合において、土地の状況により、第一号から第三号までの規定により難いときは、次により共同地線を設けて、2以上の施設箇所に共通のB種接地工事を施すこと。”
上記をもとに接地をとる手順を紹介します。
- 地中への電極の設置
- 設置システムの接続
- 接地抵抗の測定
- 適切な保護装置の設置
地中への電極の設置
まず、変圧器の二次側から出る電気のうち、通常の運用で流れる電流を地に逃がすための電極を地中に埋設します。これによって、変圧器の二次側に発生する漏れ電流が地中に流れる経路が確保されます。
接地システムの接続
電極が設置されたら、それを接地システムに接続します。接地システムは、電極や接地線、接地棒などの部品から成り立ち、電極から発生する電流を効果的に地に逃がす役割を果たします。
接地抵抗の測定
接地抵抗は、接地システムの性能を評価する重要なパラメータです。十分に低い接地抵抗を確保することで、電流が速やかに地に逃げることができます。接地抵抗を測定し、基準値を満たすか確認することが必要です。
適切な保護装置の設置
変圧器の二次側には、適切な保護装置(過電流保護や漏電遮断器など)も必要です。これらの装置は、異常な状況が発生した際に適切なタイミングで電気を遮断し、安全性を確保します。
上記の手順を遵守して変圧器の二次側を接地することで、電気設備の運用における安全性を高めることができます。ただし、実際の設置には専門的な知識や適切なガイドラインに基づいた作業が必要です。場合によっては、地域の電気規制や安全基準に従って作業を行うことが重要です。
B種接地工事の接地数値の求め方
B種接地の抵抗値は以下の公式で求めることが、電気設備技術基準の解釈第24条で決められています。
ホ 各接地工事の接地抵抗値は、接地線を共同地線から切り離した場合において、次の式により計算した値(300Ωを超える場合は、300Ω)以下であること。R =150n/Ig
- R は、接地線と大地との間の電気抵抗(単位:Ω)
- Ig は、第17条第2項第二号の規定による1線地絡電流(単位:A)
- n は、接地極数
1線地絡電流とは、高圧と低圧が混色した際に、接地線に流れる電流を言います。また、接地極数(n)が複数ある場合は電力会社等で計算する場合が多いため、1で計算する場合がほとんどです。
変圧器二次側の接地で気になるFAQ
- 接地を取らなかった(効かなかった)場合どうなるのか
- 地面に電気が流れても、地上に影響はないのか
接地を取らなかった(効かなかった)場合どうなるのか
機器に接地がない場合、以下の危険が伴います。
- 感電リスクの増加
- 機器の損傷
- 発熱や発火による火災
- 電磁干渉
- 系統の不安定
- 保護装置の機能不全
接地は、電気設備の安全性と信頼性を確保するための基本的な手段です。適切な接地が行われていない場合、上記のようなリスクや問題が生じる可能性があるため、接地の状態を定期的に点検し、必要に応じて適切な対策を講じることが重要です。
地面に電気が流れても、地上に影響はないのか
接地は地中1m付近から下に設置されています。電気は流れやすい方向に進んでいく性質があるため、土が湿っている、いわゆる抵抗値が低い地下へ流れていきます。
そのため、地上にいる人間には限りなく影響が出ないよう設計されています。