SOG開閉器とは、短絡・地絡電流を感知すると開閉器(PAS:高圧気中開閉器)に適切な命令を送るSOGという制御装置とセットになった開閉器です。
SOGとはSO(Strage Over Current)短絡電流と、GR(Ground Relay)地絡電流が合わさった名称です。そのため、短絡電流と地絡電流を検知し、PASの動作を命令する制御装置をSOGといいます。
感電や設備の故障といった波及事故を防ぐ役割があるため、重要な機器と言えます。仕組みや必要性について解説していきますので、ぜひ目を通してください。
SOG開閉器が動作する仕組み
SOGは零相電流(1/3×三相の電流和)の変化と、零相電圧(常時は0だが、地絡事故など異常時に発生する電圧)を検知して「どっかで事故が起こったぞ!」と開閉器に動作を命令する仕組みです。
短絡電流の場合
短絡事故の場合は、配電系統に短絡電流というとても大きな電流が流れます。瞬時に開放操作を命じてしまうと内部の端子が離れる際に発生するアークによってPASが壊れてしまう可能性があるため、電力会社の配電用遮断器が動作するまであえて待機させます。
その後、短期間の全域停電が発生してからPASを遮断。事故原因が切り離されたのちに、人間の手で復旧させる方法をとっています。少しライトにしてみると、、、
- 「どっかで短絡や!PAS!今動いたら壊れるから待機やで!!」
- 「全域停電した!思った通りや。よしPAS開放したれ!」
- 「うちのエリア復旧したわ。俺らが原因じゃなかったんや、よかったあ」
- 「よっしゃ、担当者PAS投入してええで!」
みたいな感じです。ちなみに、もし付近のみが停電していた場合、自家設備が原因である可能性もあるため、設備の点検が必要になるケースも考えられます。
地絡電流の場合
地絡事故の場合は、この後に解説してある「方向性」の話で詳しく解説しますが、大まかに言うと地絡電流を検知した段階で、電力会社の配電用遮断器より早く開放を命じます。
地絡の場合、感電や設備の発火といった事象につながる可能性があるため、迅速な遮断が求められているからです。
SOG開閉器の必要性:地絡とは
そもそも地絡とは、電気が接地体や大地に流れることで発生します。地絡が起こることで、機器や電気設備は帯電し、感電や設備の故障といった電気トラブルにつながり非常に危険です。
地絡が起こる原因としては、台風や大寒波などの気候による高圧線の断線や、飛来物による電線・機器などの損傷、大型クレーンや足場など金属類の接触、倒木による接触、などが挙げられます。短絡についても同じ事象が多いです。
防ぎようがないトラブルが原因であることが多いため、自家設備を守る、または電力会社への波及事故を防止する保険といったところでしょうか。ただ、老朽などによって起こる漏電による感電なども防げるため、安心安全には欠かせない装置とも言えます。
SOG開閉器の種類と特徴:方向性の有無
SOG開閉器にはVT内蔵やLA内蔵など様々な種類がありますが、「地絡」に関して知っていてほしいことは、方向性の有無です。
方向性有り(方向性)
地絡がどこで発生したかを知る装置を「地絡方向継電器」と言います。方向性ありのSOG開閉器にはこの装置が内蔵されており、自家設備の地絡や短絡を検知してPASを遮断する作りになっています。
そのため、電力会社や他の高圧需要家への波及事故を防止するだけでなく、自家設備が原因であると瞬時に判断ができ、停電への復旧に迅速な対応が可能となります。
方向性なし(無方向性)
地絡電流の方向に関係なく動作します。一見、「方向性有り」よりも安全そうな印象を受けるかもしれませんが、方向性なしの場合だと、他の高圧需要家の事故で発生した、遮断する必要のないレベルの電流でも、PASを遮断してしまう可能性があります。
また、電力会社設備と自家設備の接続点からSOG開閉器までの距離が長いと注意が必要です。SOGより電源側の自家設備高圧ケーブルがパンク(絶縁破壊)が起きてしまうと、SOGにて遮断しても電力会社設備とは切り離せないため、自家設備による波及事故が発生してしまうからです。
SOG開閉器が設置される場所
SOG開閉器は主に高圧需要家と電力会社の区分点に設置される場合が多いです。ただ、状況によっては需要家のケーブルを接続したのち、借室等のスペースでLBSが主開閉器として設置される場合もあります。
架空引込方式の場合
架空引込式の場合、主に需要家敷地内に建てられる引込柱に取り付けられます。同時にVCT(電力需給用計器用変圧変流器)という電力メーターを動かす機器が取り付けられるのが一般的です。
ただし、VT内蔵のSOG開閉器の場合は、変圧器が開閉器に内蔵されているためVCTの取り付けはありません。
SOG開閉器を通って高圧ケーブルにつながり、屋外キュービクルまたは借室や電気室などで変圧器などの高圧機器に接続されていきます。

地中引込方式の場合
地中引込方式の場合、電力会社の電柱、地中化されているなら歩道上に設置されている鉄箱からケーブルを接続し、屋外キュービクルまたは借室内にてSOG開閉器が取り付けられます。
ただ、先述したようにSOGではなくLBSを取り付ける場合もあります。
接地は何種?
SOG開閉器は高圧機器となるため、A種接地工事となります。A種接地工事は対地間10Ω以下となるように施工しなければなりません。
実務での経験談
SOG開閉器には、電源側と負荷側が決まっています。現地によって取り付ける角度はまちまちなので、そこを意識していないと中堅やベテランでもヒヤッとすることはよくあります。
また、開閉器とSOGの制御装置は両側が特別な端子でできているため、無理に差し込もうとしたり、開閉器側とSOG側を間違えたりすると簡単に破損してしまいます。電柱は車の往来や風など細かな振動が常にあるため、しっかりと差し込みロックしないと、ケーブルが抜けてしまうこともあり、何度も確認するポイントです。
また、SOGの電源を電力会社の低圧からとる場合もあります。低圧線での短絡や地絡は制御装置にも影響を与える可能性があるので、SOGが取り付けられた電柱での作業は普段より緊張しますね。