「邪魔だなあ、、、」なんてふと思ってしまう景観を損ねる電柱ですが、生活に欠かせない電気を送ったり、YouTubeやテレビを観るための電波を運んだりと24時間雨風に耐えながら働いてくれています。
電気工事に従事するものとして「電柱には一体どんな電線があるのか」気になってくれて嬉しい限りです。この記事では電柱に架線(※ロープウェーのワイヤーのように吊られているものを架線(かせん)と呼びます)されている電線の種類と合わせて、機器や電柱についてわかりやすく紹介していきます。
電柱の上から下まで:電線と機器の配置
電柱にはテッペンからみると、
- 架空地線(あれば)
- 特別高圧線:22,000V・33,000V(あれば)
- 高圧線:6,600V
- 低圧線:100/200V(まれに400V)
- 通信線
の順番で架線されています。さらには、高圧線の下に開閉器と呼ばれる四角い箱、低圧線の下または上にドラム缶のような変圧器、その周辺にカットアウト、その下にバケツをひっくり返したような形の子局といった機器も取り付けられています。
電気はよく水に例えられます。電圧を水圧に例えると、蛇口から出てくる水圧が「電気の低圧」、消防車での放水ぐらいの勢いが高圧、といったところでしょう。
特別高圧線(あれば)
電柱の最上部に設置されることがある高電圧の電線です。用途としては
- 大規模な工場やテーマパークなどへの専用電線
- 小規模発電所から変電所までの送電線
として使われるのが一般的です。特別高圧線が架線されている電柱には、「特高」や接近限界距離(これ以上は装備なしでは近付けませんよという境界)を示すシールや表示札が貼られています。
また、この電線がある電柱は、16m〜18mの長い電柱が使用されていることが多いです。さらに、電線を支持する碍子(がいし)と呼ばれるものも、下部に設置されている高圧線に使用されるものよりゴツいので、碍子の大きさが見分ける一つのポイントとなります。
高圧線
高圧線は、電気の供給を受ける建物があれば、どんなに田舎でも架線されている電線です。一般的には3本の電線が縦または横に並んで張られており、特別高圧線がない場合は、電柱の一番上に架線されています。
ある程度の”たるみ”を持っているのは、風の影響をできる限り減らすことと、電柱への張力の負担を軽減させる目的があります。たまに、「見栄えが悪いから」という理由で棒張りを希望する方もいるのですが、そうすると電柱が傾斜したり電線を支持する碍子が破損したりといった問題が発生してしまう可能性があります。
電柱間が長ければ長いほど張力がかかるので(中には1トン以上の張力がかかっているものも)、たるみの見栄えについては許容してくれると電気屋としては助かるのが本音です、、。
話が逸れましたが、ショッピングモールやマンションなど大型の建物は、高圧を受電して、自家設備で低圧に変換して電気を使っているところもあります。※電線路から電気を受給している電線を引込線と言います。
低圧線
低圧線は高圧線の下に架線されている電線です。変圧器によって高圧から低圧に変圧(6600V→100/200V)された電気が流れていて、一般家庭や小規模マンションへの供給に最適な電柱までの最低限で架線されています。
電気の特性上、長い距離を低圧線で電気を運ぶことは効率が悪いため、変圧器が多数設置されている密集型の住宅街では、ほとんど使用されていないでしょう。変圧器を設置する代わりに、低圧線で隣の電柱に電気を運び、その低圧線を電源として引込線に接続するのが一般的です。
低圧線は2本〜4本が縦または横に架線されています。地域によって施工方法にばらつきがあるので、コレ!と断言することはできませんが、特別高圧や高圧に使われている電線を支持する碍子が、小さいまたは使用していないものが低圧線であると見ていいでしょう。
また、自宅に張られている引き込み線から辿って、一番最初に接続されている電線が低圧線だという見方もできます。
引き込み線
電柱から各家庭や建物に直接電気を届ける電線です。2〜4本がねじねじになって1本の電線となっているのが特徴で、
- 2本の場合は100V
- 3本ある場合は100Vと単相200V
- 4本の場合は100Vと三相200V
を供給しています。架空引き込み方式だと、電柱と住宅を渡っている電線が引込線であり、通信線に分類される電話線や光ケーブルと同じ場所に張られています。
引込線には、接続ミスの減少や、視認性を向上させるために、ライン状に緑や青が色付けされています。稀に引込線として使用されるものが、低圧線として使用される場合もありますが、「どこからどこまで架線されているか」を見れば、なんとなくその用途がわかるかと思います。
家の付近に電柱がない場合は地中引き込み方式の場合があります。引込線については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

弱電線(通信線)
弱電線は、電話やインターネットなどの通信データを運ぶ電線です。地上から5〜6m程度にある、複数の電線を総称して弱電線および通信線と呼んでいます。
通信線の中には、
- NTTやKDDIといった通信キャリア
- テレビの電波を有線で運ぶ電線
- Jcomなどの自社独自回線
- 電力会社の制御通信ケーブル
など、さまざまな会社のものが敷設されています。そのため、電柱の中では一番電線数が多く、太いものから細いものまで多種多様な電線が張られています。最近では光の回線も増えたため、数年前よりさらに複雑になっているため、電気工事士だからといっても、専門に携わっていないと、何が何だか全くわかりません。(運営者は配電線路周辺を専門に扱っているので、何にもわかりません)
地面に降りてきているワイヤー(支線)
均衡を保つ目的があるワイヤーが支線です。電柱は全長の約1/6が埋まっています。安全係数などさまざまな安全にまつわる部分から、倒壊しないよう考えられていますが、1方向からだけ強い張力がかかるとさすがに傾いてくるため、反対方向から電柱を引っ張っています。
このワイヤーは電柱間にも張られています。これを共同支線または架空支線と呼びます。ワイヤーには電気を通さないための絶縁被覆(電線に張り付いているもの)がないため、碍子をワイヤー間に挟んで施工されています。
電柱に設置されている機器の役割
記事冒頭に紹介したように、電柱には以下の機器が敷設されています。
- 手動・自動開閉器&子局(AS)
- 避雷器(LA)
- 変圧器(TR)
- 自動電圧調整器(SVR)
手動・自動開閉器&子局
電気の流れを制御し、緊急時やメンテナンス時に電気を遮断するための装置です。照明のスイッチと大きくは変わりません。ただ、倒木や大型作業車などの接触により事故が起こった場合は、変電所から周辺一帯が停電しますが、すぐに復旧を開始する「再閉路」というシステムが作動します。
この再閉路の中で事故点を発見し、もう一度瞬時停電します。その後、事故点を認識したシステムは、そこだけを避けて送電し、該当エリア以外の停電を復旧させます。まとめると
- 変電所「事故ったぞぉー!危ねえから停電するわ!」
- 変電所「正確に事故点探すために一回送電してくわ!」
- 開閉器「あ!自分より先のエリアですね。自分まで送電お願いしまーす」
- 変電所「ok!ok!あそこな!じゃ、送電しまーす」
- 開閉器「事故治ったら電気送るんで待機してまーす」
といったように、働いてくれる役割を持っています。また、弱電線付近にあるひっくり返したバケツの形状をしている機器が、開閉器の制御装置です。子局が頭で、開閉器が体、といったところでしょう。
変圧器(トランス)
高圧の電気を家庭やオフィスで使える低圧に変換する装置で、電柱の中間部に設置されています。ドラム缶のような形状をしていて、用量に応じてサイズも大きくなっていきます。
変圧器は、開閉器のように電気を遮断する機能は持っていないので、高圧線からの波及事故を防止するため「カットアウト」と呼ばれる設備を間に挟んでいます。変圧器周辺にある、つつ型や箱型の白いものがカットアウトです。
変圧器は内部にぐるっぐるに電線が巻かれて作られたコイルが入っています。

避雷器(LA)
雷による過電圧から電気設備を保護します。雷は1億Vというイカれた電気が降ってくる現象なので、配電線路に落ちてしまうと、高圧(6,600V)の1万5千倍の電圧が印加されてしまいます。
なんの保護もしていないと、急激な電流増加によって熱を持ち、機器の故障・電線の溶断や発火など大災害になりかねません。(雷による損害は1000億円を超えるとの話も、、。)そのため避雷器を設置することで、雷による過電圧のみを大地に逃し電気設備を保護しています。
「大地に逃したら感電するじゃん」と思う方もいるでしょう。電気はより絶縁性が低いものに流れていきます。つまり抵抗が低いものに進んでいく修正があり、避雷器に施工される接地※は、非常に厳しく定められているため、人体が感電することはありません。
※大地に電気を逃す設備を「接地」と言い、身近なものだと、冷蔵庫や洗濯機についている緑のリードも接地として接続されるものです。避雷器は「A種接地」に分類され10Ω以下とされている。(乾燥した肌の抵抗は5000Ωほど)

めっちゃでかいSVR(自動電圧調整器)
SVRを説明するには、まず「電圧降下」という電気の現象を簡単に説明しなければなりません。電線に使用されている金属は主にアルミや銅が使用されていますが、金属内の抵抗によって導電率が100%ではないため、電線路が長くなるにつれて、徐々に電圧が下がっていきます。
他にも、使われる電気が増えると電圧が下がっていきます。(ドライヤーをつけるとライトが暗くなったり、延長コードを繋げていくと家電の元気がなくなる現象)これを電圧降下と呼びます。
そのため、変電所つまり電源から遠くなると電圧が下がってしまって、正常な供給ができなくなるのでSVR(自動電圧調整器)が設置され、下がった電圧を正常な数値まで昇圧しています。2トン以上の重さがある巨大な設備であるため、かなり大掛かりな設備です。
引込柱にあるのはSOG開閉器やVCT
コンビニや大きめの店舗の敷地内に電柱があるのを見たことがあるでしょう。それらは引込柱(ひきこみちゅう)と呼び、需要家の自家設備となります。
その電柱に設置されているのが、SOG開閉器やVCTという機器です。詳しくは以下の記事にて。

電柱の種類
先ほどチラッと出てきましたが、電柱にも種類があります。基本的に物は変わりませんが、電気工事の世界では持ち主や役割によってその呼び方が変わります。(立場によっても呼び方が違うかもしれません)まずは一覧で紹介します。
- 電力柱(電力会社)
- 共架柱(通信会社)
- 引込柱・引き込みポール(需要家・電力会社設備)
- 通信ポール(通信会社)
- その他(民間企業など)
共架(きょうが)は、同じ電柱に、複数の企業の設備が架線されていることを言います。通信会社の設備は、地上から4〜6mの地上高を確保すればいいので、10m以上の電柱を建てる必要がありません。しかし、道路に何本も電柱があると邪魔すぎるので、共架柱を建てています。
電柱の下の方(地上から3〜4mほどの位置)に「〇〇電力」といった札がついています。その中に、”共架”と記されていたり、色を変えたり、といった形で誰でもわかるように表示されています。
なぜ電線は3本なのか?
水道に上下水道があるように、電気も回路を完成させなければなりません。そのため、最低でも2本はないと電気を使えないのですが、出力を変化させるためには3本目が必要です。
動力と呼ばれる三相200Vの出力を生むためには、変圧器が2台必要となり、高圧線も3本必要となります。