高圧受電設備(キュービクル)の年次点検や、波及事故防止のための更新工事において、最も重要かつ緊張感のある実務の一つが「SOG制御装置の試験(SOG試験)」と「柱上PAS(高圧交流負荷開閉器)の点検・施工」です。
「SOGの仕組みや原理は理解しているけれど、実際の現場で試験器をどう接続し、どの数値を判定基準にすべきか確信が持てない」「PASの更新工事で現場で抑えるべき施工ポイントを知りたい」という電気主任技術者や施工管理者も多いのではないでしょうか。
本記事では、年次点検におけるSOG試験の具体的な手順(試験器の接続・整定値の読み方・判定)から、柱上PASの取替施工における注意点、現場で起こりがちなトラブルシューティングまでを実務目線で完全解説します。
1. SOG試験に必要な資機材と安全基本動作
SOG試験(過電流・地絡保護動作試験)を現場で安全かつ確実に行うためには、適切な試験資機材の準備と、受電前の安全対策が徹底されていることが大前提となります。
必要な試験機材・工具一覧
- SOG多機能試験器(位相特性・動作時間測定機能付き)
- 専用試験用リード線(コネクタケーブル・電源コード・アース線)
- 高圧絶縁抵抗計(5000V / 2000MΩ等)
- 検電器(高圧用)および放電棒
- 手元証明・無線機(高所作業車と地上との連絡用)
試験前の安全3大基本動作
PASが開路(OFF)状態であることを目視確認し、高圧検電器にて無電圧を確認後、残留電荷を確実に放電させます。
構内事故による受電遮断や電力会社側への逆加圧を防ぐため、安全措置(短絡接地器具など)を徹底します。
試験器本体の接地端子は、確実に現場のA種接地(または現場の共通接地)へ接続します。
2. SOG試験(動作・位相特性)の具体的な手順と判定基準
SOG制御装置の試験は、主に①過電流(SO)ロック機能試験、②地絡(GR)動作時間試験、③地絡方向(DGR)位相特性試験の3項目で構成されます。
【試験器】 ── (コネクタ接続) ──► 【SOG制御装置】 ── (制御信号) ──► 【PAS本体】
│ │
├── Vo(零相電圧)印加 └── トリップコイル駆動(トリップ確認)
└── Io(零相電流)印加
手順1:試験器とSOG制御装置の接続
SOG制御装置の底部にある試験用コネクタ(丸型多極コネクタ)のキャップを外し、試験器の専用ケーブルを接続します。
💡 現場のコツ
コネクタの差し込み不足やロックリングの締め忘れは、信号不通による「試験器の不動作」の原因第1位です。ノッチ(凹凸)の位置を合わせ、カチッと奥まで挿入してロックします。
手順2:過電流(SO)ロック機能試験
構内で短絡事故が発生した際、遮断容量を超えた大電流でPASを開閉して内部破壊(爆発)を起こさないよう、あらかじめ設定された電流値以上で「開路をロック(待機)」させる機能の試験です。
- 試験方法: 試験器から過電流設定値(例:200Aや400A相当)を超える模擬電流を印加します。
- 判定: 制御装置の「SO動作(ロック)」表示灯が点灯し、PASにトリップ信号が出力されない(開路しない)ことを確認します。電流を遮断・整定値以下に下げた後、遅延(約0.2〜0.5秒後)してトリップすることを確認します。
手順3:地絡動作(GR/DGR)試験
構内で地絡(漏電)事故が発生した際、設定された零相電流($I_o$)および零相電圧($V_o$)で正しくトリップするかを測定します。
- 試験方法
- Vo(零相電圧)を定格値(例:5%=190V相当)に固定。
- Io(零相電流)を整定値(例:0.2A)の130%〜200%程度印加。
- 電流印加からPASがトリップ(開路)するまでの「動作時間」をタイマーで自動測定します。
- 判定基準: 動作時間が0.2秒以内(標準整定時)に収まっていること。
手順4:地絡方向性(DGR)位相特性試験 ※方向性SOGの場合
自構内の地絡事故のみで動作し、他所(隣の事業者)の地絡事故による「もらい事故(不要トリップ)」を防ぐための方向判別能力を試験します。
- 試験方法:Vo と Io の位相差(進み・遅れ角度)を変えながら印加します。
- 判定基準:
- 動作領域(最大感度角 付近:進み45°前後): 確実に動作すること。
- 不動作領域(遅れ位相や反比例領域): 電流を流しても一切動作しないこと。
3. 現場で迷わない「SOG整定値」の考え方
SOG制御装置には、現場の設備規模やケーブル長に応じて変更できる切り替えスイッチ(タップ)がついています。
標準的な整定値の目安
| 項目 | 標準整定値の目安 | 現場での考え方・設定理由 |
| 地絡電流(Io) | 0.2 A 〜 0.5 A | 原則「0.2A」に設定。構内ケーブルが極めて長く、浮遊容量による静電容量漏れ電流が大きい現場のみ「0.4A〜0.5A」へ上げる。 |
| 地絡電圧(Vo) | 5 % (190V相当) | 標準は「5%」。電源系統のひずみやノイズによる誤動作を防ぎつつ、微小地絡を検知できるバランス値。 |
| 動作時間(t) | 0.2 秒 | 電力会社側保護リレー(配電線GR)との保護協調をとるため、0.2秒(遅くとも0.3秒以内)に設定。 |
本記事では絶縁抵抗試験(メガー)については記載していません。点検にはこちらも含まれていますので、本記事と合わせてこちらもご覧ください。
4. 柱上PASの取替・施工工事での現場チェックポイント
PASの耐用年数(推奨更新年限:約15年〜20年)経過に伴う取替工事では、高所作業および柱上特有の施工精度が求められます。
【電力会社配電線】
│
┌──────┴──────┐
│ 柱上 PAS │ ─── (引きひも:手動開閉用)
└──────┬──────┘
│ (制御ケーブル:ドリップループを形成)
┌──────┴──────┐
│ SOG制御装置 │ ─── (試験用コネクタ / アース線)
└─────────────┘
1. 搬入・吊り上げ時の「ブッシング」保護
PAS本体の磁器製(またはエポキシ製)ブッシングは、衝撃に非常に弱い部位です。レバーブロックや吊り具をかける際、ブッシングに直接用具が触れないよう保護カバーを装着し、吊り上げ時の接触事故を防ぎます。
2. 電源側(LINE)と負荷側(LOAD)の向き確認
PAS本体には必ず「電源側(LINE / 一次)」と「負荷側(LOAD / 二次)」の向きが指定されています。
これを逆に接続してしまうと、内部のZCT(零相変流器)やZPD(零相電圧検出器)の位置関係が狂い、地絡事故時に正しく動作しなくなる(または方向性を誤認する)ため、銘板および端子マークの目視確認が必須です。
3. 制御ケーブルの「ドリップループ」形成
SOG制御装置へつながる制御ケーブルは、電柱に沿わせて配線します。この際、制御装置のケーブル導入部(グランド部)の直前で「水切り(ドリップループ)」を形成します。雨水がケーブルを伝って制御装置内部へ浸水するのを物理的に防止するための重要施工です。
5. 現場でよくある失敗事例とトラブルシューティング
年次点検や更新工事の現場で起きやすいトラブルと、その対処法をまとめました。
故障・トラブル1:SOG試験器を繋いでも動作時間が測定できない
- 原因:① コネクタのピン折れ・接触不良。② PAS本体のトリップコイル(TC)電源線の断線、またはSOG制御装置の電池(バッテリー)消耗。
- 対策:コネクタを外し、ピンに曲がりがないか確認。制御装置の「バッテリー点検ボタン」を押し、電圧低下インジケーターが点灯していないか確認します。
故障・トラブル2:年次点検後、受電の瞬間にPASが不要トリップした
- 原因:受電時の励磁突入電流や、構内トランスの静電容量突入による「$V_o$・$I_o$の過渡現象」。またはDGRではなく「無方向性GR」を使用していて外部事故のサージを拾った。
- 対策:高圧ケーブルの総延長が長くなった(キュービクル増設等)現場では、無方向性SOGから「方向性(DGR)SOG」への更新を提案・実施します。
まとめ:SOG試験とPAS管理が「波及事故ゼロ」の砦
- SOG試験は「接続・整定値・トリップ確認」の3ステップを確実に実施する。
- 整定値は原則「Io=0.2A / Vo=5% / 時間=0.2秒」とし、現場のケーブル長に応じて調整。
- PAS取替時は「LINE/LOADの向き」「ブッシング保護」「ドリップループ」を徹底。
正確なSOG試験手順のマスターと適切なPAS施工は、構内事故を全社停電(波及事故)へ拡大させないための最大の防御線です。日頃の点検と更新提案で、安全な高圧設備を維持しましょう。
📜 根拠となる規格・公的出典
- 技術基準:経済産業省「電気設備技術基準の解釈」第30条・第38条(地絡遮断装置の施設)
- 業界規格:JEMA(日本電機工業会)「高圧交流負荷開閉器(PAS)保守点検指針」
- 保全基準:日本電気協会「高圧受電設備規程」