ビニールテープは電気を通さない、いわゆる「絶縁」性能を持ったテープの総称です。電気工事の世界では「絶縁機能が高いもの」つまりは絶縁テープを、ビニールテープと呼んでいます。
電気工事においてビニールテープは、主に低圧での設備に使用され、スリーブ(接続)箇所の絶縁、電線の端末処理などに使われます。
また、絶縁テープと呼ばれるものには、自己融着テープや水気の多い場所(通電しやすい)に使用する種類のテープもあり、状況に合わせて使用されています。
ここではビニールテープについての情報と、電気工事に使われる場合について解説しています。
ビニールテープは電気を通すのか?
ビニールテープは基本的に電気を通さないと考えて良いです。電気工事だけでなく、車や電化製品など、電気を扱う幅広いものに使用されており、生活に欠かせないものと言えます。ただ、絶縁性能があるからといって、間に1枚挟んだだけでは全く安心できません。
また、電気工事に使用されるビニールテープは、「電気絶縁用ビニールテープ」が一般的です。100圴などにもビニールテープは販売されていますが、電気工事に使用する場合は安心して使えるように、「nitto」や「3M」といったテープ専門のメーカーを選ぶと良いでしょう。
ビニールテープ(絶縁テープ)の絶縁性能の仕組み
ビニールテープは、ビニール袋やビニール手袋などのプラスチック製品と同じ材料である「ポリ塩化ビニル」という”絶縁体”が使用されています。
これは電化製品のコンセントリードを包む素材でも使われているので、感電やショート(短絡)といった電気トラブルが起きないことから、その絶縁性が証明できるでしょう。
素材(PVC:ポリ塩化ビニル)の特性と電気抵抗
ポリ塩化ビニルの用途は幅広く、電線の被覆や農業用ビニールハウスなど様々なものに使用されています。その特徴は、
- メリット
- 耐アーク性60~800secと高い ※耐アーク性:アーク放電(電気火花)によるプラスチックの劣化耐性
- 空気による劣化耐性が高い(酸化)
- 耐水性に優れている
- デメリット
- 耐熱性があまり高くない
- 有機溶剤に弱い
このように電気に関しての性能が非常に高い物質であるため、ビニールテープは電気工事に使用されています。耐熱性が低いとデメリットがありますが、その耐熱温度は80℃であるため、高温を伴う場所でなければ十分といえるでしょう。
ポリ塩化ビニル以外が素材の絶縁テープ
ビニルテープのような絶縁テープは主にアセテートテープ・自己融着テープ・ガラスクロステープの3種類があります。
アセテートテープ | 素材 | アセテート布 ※合成繊維 | ||
特徴 | ・ビニルテープより耐熱性がある ・凹凸に適している ・手で切りやすい | |||
用途 | 家電や車載のハーネス結束など | |||
自己融着テープ | 素材 | 合成ゴム | ||
特徴 | ・引っ張りながら巻くと一体化する ・機密性・防水性・絶縁性能が高い | |||
用途 | 高圧線被覆の補修や地中ケーブルの接続箇所など | |||
ガラスクロステープ | 素材 | ガラスクロス | ||
特徴 | ・他のテープに比べ強度が高い ・耐熱性に優れている | |||
用途 | 高温になる箇所(変圧器内部や機器などの外装) |
自己融着テープは、6,600Vの電圧がかかる高圧線などにも使用されるほど高い絶縁性能を誇ります。配電線路の工事では、電気絶縁用ビニルテープ(絶縁テープ)と自己融着テープを主に使用しているほど、電気工事に馴染み深いものです。
セロハンテープetc.と絶縁テープの違い
「テープ」と考えるとセロハンテープやガムテープ、マスキングテープなど様々なテープが頭をよぎるかと思います。しかし、電気工事においては、それらが絶縁性能があると信用することはできません。
というのも、それらのテープにも絶縁性能はありますが、長年の経年劣化に耐えられるものか、100Vや200Vまたは6600Vに耐えうる絶縁性能があるかと言われると、十分ではないからです。
実際に多くの自治体が、乾電池などの処理にセロハンテープを使用して絶縁処理をするようHP等で呼びかけていますが、電気工事に関するサイトや運営者の経験からはセロハンテープを使用したことはありません。
対して、電気絶縁用ビニルテープは600Vまでを想定して製造されているため、低圧以下の絶縁処理として使用されています。
色付きビニールテープはどんな時に使われる?
電線には、どの線に電気が印加されているかわかるよう、赤や白、青や緑などの色がついています。色付きビニルテープはそれらの識別をよりわかりやすくしたり、接続する際の目印として使用されることがあります。

もちろん絶縁性能はビニルテープと変わりませんが、用途として絶縁処理が主な目的ではないため、少々高価で長さもあまりありません。そのため、絶縁処理が目的の場合は、黒色の絶縁テープを使用するのが一般的です。
電気工事での正しい使用方法
屋内配線・配電線路などを指す外線では、主に電気絶縁用テープと自己融着テープが使用されます。電気工事で絶縁テープを使う際には、この2つのテープの巻き方や注意点など参考にしてください。
低圧に使用するビニルテープの場合
電気工事において、低圧の場合2〜3回巻き、”4〜6重”を目安にビニールテープを巻きます。理由は以下が挙げられます。
- 劣化による絶縁性能の低下防止
- 電線の切り口が飛び出ないようにする
- 電線と被覆の間や接続箇所に水や埃が入らないようにする
- 粘着力の低下による剥がれを防止する
ビニールテープは半重ねしながら巻いていきましょう。
屋外で使用する場合
屋外では雨や雪、さらには気温の高低によってビニルテープの巻きにくさが変わってきます。
気温が高い | 気温が低い | |
晴れ | 伸びすぎる ベタベタする | 比較的巻きやすい |
雨や雪 | 粘着性が落ちる | 伸縮性が落ち千切れる |
ビニールテープを濡らさないよう注意したり、ポケットの中に入れて温めるなどの対策をすると綺麗に巻きやすくなります。よく目にする配電線路(電柱や引込線など)でもビニールテープは使用されているので、気が向いたら見てみてください。
自己融着テープの巻き方
自己融着テープは、引き伸ばしながら巻き付けることで粘着性が増し、素材である合成ゴムがくっつき合い一体化します。そのため、機密性が高まり防水性や絶縁性が向上するという仕組みになっているため、以下のことに注意して巻き付けるようにしましょう。
- しっかり引き伸ばしながら巻き付ける
- 引き伸ばす目安は、元の太さの半分ほどまで
- 半重ねしながら隙間なく
- 終端部は剥がれやすいのでしっかり処理する
自己融着テープは半日から1日ほどで馴染み一体化します。そのため、気温が低い日や雨が降っている日などは剥がれやすいので、上からビニールテープなどを巻くと良いでしょう。
家庭の電気工事でも資格が必要ですか?(DIY向けの注意点)
電気工事は、省令で定める軽微な作業を除き無資格で作業することは、自宅であっても認められていません。「テープを巻く」という作業であれば、軽微な作業となる箇所もありますが、電気火災や感電といった電気トラブルを防止するため、免状を受けた電気工事士に依頼しましょう。
どうしても、自分で自宅を改装し電気工事もしたい、というのであれば、第二種電気工事士の資格を取得するようにしてください。
※冷蔵庫やエアコンのアース線をコンセントの接地端子に繋ぐ作業は資格が必要ありません。しかし、コンセントの増設などは資格が必要です。
まとめ:安全な電気工事のために
本稿はビニールテープと絶縁テープについてや、その使い方を解説しました。ビニールテープは電気を扱う製品や配線にとって欠かせないものです。
意外にもビニールテープを綺麗に・正確に巻くことは難しく、数年間巻き続けた作業員でも上手に巻けない人は少なくありません。電気設備にビニールテープを使用する場合は、適したものを正しく使用するよう心がけてきださい。