A種接地工事は、高圧機器の外箱や避雷器に施す接地工事を言います。主に6,600Vの機器のほか、特別高圧33,000V以下の電圧がかかる機器やアームといったものにも接続されています。
そのため高圧設備の作業にはほぼ必ずA種の接地工事が付随してくるので、しっかりと施工方法について把握しておきましょう。
まず確認!A種接地工事の施行ルール
A種接地工事を施行する上で、守らなければならない項目は以下の通りです。(※改正 20241004保局第1号:電気設備の技術基準の解釈から引用または編集)
- A種接地工事は10Ω以下とする
- 接地極は地下75cm以上の深さに埋設する
- 接地極を鉄柱その他の金属体に近接して施設する場合は、底面から30cm以上の深さに埋設する。または、側面から1m以上離して埋設すること
- 地表上60cmまでは絶縁電線(屋外用ビニル絶縁電線を除く)又は通信用ケーブル以外のケーブルを使用すること。※金属体や鉄柱に沿う場合はそれ以降も絶縁電線。沿わない場合の60cm以上は該当しない。
- 接地線の地下75cmから地表上2mまでの部分には、合成樹脂管又はこれと同等以上の絶縁効力及び強さのあるもので覆うこと(厚さ2mm未満の合成樹脂製電線管及びCD管を除く)
- 接地線は、避雷針用地線を施設してある支持物に施設しないこと
- 使用する電線は、直径2.6mm以上の軟銅線であること
地下75cm以下に埋設することは、言葉の通り理解できるでしょう。しかし、そのほかについては省令の言葉からだといまいち具体的に理解しにくいのでは?以下のセクションにて、細かく解説していきます。
鉄柱その他の金属体(③該当)
金属体に該当するものとして、キュービクルや複合柱などが該当します。接地は機器の故障などによって、機器や絶縁体から出てきた電気を大地に逃すことで感電などの危険を回避することが目的です。
そのため、絶縁性のない接地線を使用していると、金属体が帯電してしまい充電部が拡大してしまう恐れがあるため、絶縁性能を持った電線の使用が義務付けられています。
A種接地工事の導体の太さと種別(④該当)
A種接地工事は直径2.6mm以上の軟銅線(単線)を使用しますが、主に使用されるのは「より線」と呼ばれる種類を使用しているため、5.5mm2(sq:スケア)以上が該当します。また、避雷器には14sq以上を使用します。
また、接地線には主に「IV:ビニル絶縁電線」が使用されます。色は緑が一般的です。
ただ、高圧自動遮断器については対応A数に応じて接地線の太さが変わり、以下の表の通りです。
定格電流 | 接地線太さ |
100A以下 | 5,5sq以上 |
200A以下 | 14sq以上 |
400A以下 | 22sq以上 |
600A以下 | 38sq以上 |
800A以下 | 50sq以上 |
1000A以下 | 60sq以上 |
1200A以下 | 100sq以上 |
地下75cmから地表上2mまでの合成樹脂管(⑤が該当)
接地に電気が流れた場合、接地極から電気を逃すのが最も効果的です。そのため接地線から電気が逃げては効果が下がってしまうため、接地極が埋設される地下0.75mから、人が触れる恐れのある地表上2mまでを保護します。※地表上だと、擦れやイタズラなど様々な要因からの断線などを防止しています。
接地に使われる合成樹脂管には「アースモール」という材料が多く使用されます。電柱などの人目につきやすい場所では、電線が入れやすく取り替えも簡単にできるよう切れ目が入っているものがよく使われています。
A種接地工事の施工方法
接地の施工方法は、
①掘削→②アース棒の打ち込み→③接地抵抗値の測定→④アース線との接続→⑤埋め戻し
といった手順で進みます。測定値が10Ω以下にならなかった場合は、②から繰り返す、または接地抵抗を下げる特殊な材料を使用します。
アース棒を打ち込む注意点
アース棒とは接地極の一つで、扱いが簡単なことから通常の地質で使われるものです。長さが1.5mあり、振動工具による打突で打ち込む方法が一般的です。振動工具を使用するので、振動工具の特別教育を受講した人や防振手袋の取り付けをしたものが、打突するようにしましょう。
また、接地極の打ち込み作業として、0.75mより少し深いくらいまで掘削するのが一般的です。しかし、アース棒の上部が地下0.75mまで埋設されなければならないため、打ち込んでいる先(地中)を確認することはできません。
そのため、埋設調査という水道局やガス会社などに、接地極を打ち込む箇所に埋設物がないか、確認するようにしておきましょう。
- 0.75mより深く掘削する
- 振動工具特別教育を受講する
- 防振手袋を着用する
- 接地極を打ち込むところの埋設物を確認する
接地抵抗の測定方法
単独接地を測定する場合には「接地測定器」という機械を使用します。接地測定器は、打ち込んだ接地極から電気を流し、10mおきに差し込んだ仮の接地極が受けた電気から抵抗値を測定する機械です。

接地測定器は、Eを施工する接地極・P極がEから10m・C極がP極から10m離した位置となります。運営者は野球に見立てて、Eをホームとしたときに、ピッチャー(P極)センター(C極)といった位置関係で覚えました。
土質によって接地抵抗値は大きく変わり、粘土や土といった水分を含んでくっつきやすいものは比較的抵抗値が下がりやすく、岩石や岩盤は抵抗値が高いまま下がらないといったことがあります。
その時には接地極をより深く打ち込むか、2極・3極と増やすことで抵抗値を下げています。
共同接地(共同地線などにより、複数の接地極が繋がっているもの)である場合、「アースクランプテスター」という機器で接地抵抗値を測定することができます。地面を通して回路がループになっているもののみ活用できるので使い所は限定されますが、仮の接地極を刺したりリードを用意・片付けする手間がなくなるので、積極的に活用していくと作業の時短につながります。
実務事例の紹介
施工時の注意事項とトラブルシューティング
掘削していくと土質が変わることはよくあることです。そのため上層は掘りやすい土であっても、2mほどから砂利や石が混じることがあります。
その場合、アース棒を打ち込んでも先端が石にぶつかり進まなくなることは、電気工事のあるあるです。無理に打ち込むと、アース棒の先端が打突によって潰れてしまい、アタッチメントから外れなくなることもあるので、早々に諦めるのが吉です。
しかし、逆も然りで下層に地下水などが流れており抵抗値が急激に下がることもあります。その判断はやはり経験といった部分が大きくなるかと思いますが、状況に応じて接地極の種類を変えたり、打ち込み場所を変えたりしていきましょう。
抵抗値が下がらないときは?
とはいえ、どうしても抵抗値が下がらないところもあります。そんな時はアース棒の性能を強める接地抵抗低減剤を使用しましょう。10年前は、水と混ぜてセメントを作るように低減剤を使用していましたが、現在は水いらずのもの(地中の水分を使う、最初からゲル状のものなど)が販売されています。
無理に抵抗値を下げようとすると時間も労力も大きくなってしまうので、多少コストは掛かってしまうかもしれませんが、使用をお勧めしたいですね。
トラブル | 主な原因 | 解決策 |
接地抵抗値が高すぎる | 乾燥した地盤、砂利層 | 追加接地極を打ち込む、接地抵抗低減剤を使用 |
アース棒が入らない | 石や岩盤に当たる | 別の場所に変更、またはパイプアース工法を採用 |
接地種別が混在する場合は?
キュービクル内ではVSTや変圧器など、接地種別が違う機器が設置されます。この場合、基本的には機器にあった接地をそれぞれ施さないといけないのですが、特別な条件下でのみ、その接地極を供用することができます。
となっています。もし抵抗値が規定より高く供用化した場合、高圧の電気が低圧のアースに流れ込む可能性もあるため、不用意に供用化しないように注意しましょう。

最新の接地工法「パイプアース接地工法」とは
パイプアース接地工法とは、近年現場にも導入が始まった新しい接地工法です。パイプ状になった接地極を打ち込み、その中に接地抵抗低減剤を流し入れることで、アース棒よりも抵抗値を低く施工することができます。
一回の打ち込みで抵抗値が低く施工できるため、作業の効率化や労力の軽減につながり、現在注目され始めています。
運営者も使用してみましたが、初めはアース棒の方が作業が早かったものの、抵抗値が下がりにくい場所では圧倒的にパイプアース工法の方が早かった印象です。初めは使い方や手順に戸惑うかもしれませんが、今後普及していく可能性は十分にあると感じました。