高圧受電設備の引込工事(1号柱)や、構内配電線の新設・移設工事において、土台となるのが「電柱(支持物)」の選定と施工です。
現場で「どの長さ・荷重のコンクリート柱を選べばいいのか」「根入れ深さはどう計算するのか」「根巻きコンクリートや支線(タイワイヤー)はどんな条件で必要なのか」といった判断に迷う電気工事士や施工管理者も少なくありません。
本記事では、電柱の種類(RC柱・鋼管柱)や規格(長さ・末口径・設計荷重の読み方)から、根入れ深さの1/6計算ルール、根巻き・支線の必要判定、建柱工事の現場実務までを網羅的に完全解説します。
1.電柱(支持物)の種類と現場での使い分け
日本の電気工事・配電工事で使用される支持物は、主に「鉄筋コンクリート柱(RC柱)」と「鋼管柱(パンザマスト等)」の2つに大別されます。
【鉄筋コンクリート柱(RC柱)】 ── 施工性・耐久性・コストのバランスが抜群(標準仕様)
【鋼管柱(パンザマスト/組立柱)】 ── 重機が入らない狭小地・山間部・仮設用に最適
1.鉄筋コンクリート柱(RC柱)
現場で最も一般的に使用されている電柱です。遠心力を用いて高密度コンクリートを成形した「遠心成形プレストレストコンクリート柱(PC柱)」が主流です。
- メリット
- 耐久性が高く、塩害や腐食に強い。大量生産されているためコストが安い。
- 用途
- 街中の配電線、自社敷地内の高圧受電用1号柱(引込柱)、構内配電用。
コンクリート内部には鉄筋が組み込まれていますが、実は中心部は空洞です。「強度は大丈夫なの?」という声が聞こえてきますが、問題ありません。空洞である理由は、耐震性を向上させるためです。
耐震性と言っても、地震だけではありません。電柱は電線を保持しているため、風の影響を強く受けます。内部までコンクリートでびっしりだと、小さな揺れを受けているうちに、徐々にひび割れしていき、自重に耐え切れなくなるそうです。
対応年数が50年であるのも、中心部が空洞であるがゆえ、でしょう。
2.鋼管柱(パンザマスト・テーパー鋼管柱)
鋼板を筒状に成形した電柱です。特に数ブロックの短い鋼管を現地で繋ぎ合わせる「パンザマスト(組立鋼管柱)」が有名です。
- メリット
- コンクリート柱に比べて非常に軽量。分割して手搬入できるため、大型の建柱車(掘削重機)が入らない狭小地、裏道、山間部でも施工可能。
- 用途
- 建柱車の進入不能箇所、一時的な仮設受電柱、通信・防犯カメラ用ポール。
とはいえ、人で運ぶのはなかなか骨が折れる作業です。以前、山頂にあるパンザマストの撤去作業をしたことがありますが、本当に大変でした。金属でできた筒の接合部を切断し、下から叩いて下部と分離させ、地上に降ろし、手作業で運搬すると言ったものです。
できればもう2度とやりたくありません。
2.電柱のサイズ・長さ・銘板の読み方(末口径と設計荷重)
電柱を選定する際、必ず確認するのが「全長(長さ)」「末口径(すえくちけい)」「設計荷重(せっけいかじゅう)」の3つの規格数値です。これらは電柱の地際(地表から約1.5m付近)にある銘板(金属プレート)に刻印されています。
【銘板の刻印例】 15 - 3.5 - 190
│ │ └─► 末口径:190 mm
│ └───────► 設計荷重:3.5 kN(約350kgf)
└──────────────► 全長:15.0 m
1.全長(長さ)のラインナップと用途
高圧配電・自社引込用として現場で頻繁に使われるコンクリート柱の長さは、以下の通りです。
- 7m〜10m:低圧引込柱、敷地内の照明用・通信用ポールの標準サイズ。
- 11m〜13m:自社敷地内の高圧引込1号柱(低圧線との併設がない場合)の標準サイズ。
- 14m〜16m:高圧配電線と低圧配電線を併設(共架)する場合や、道路横断で高さを稼ぐ場合の標準サイズ。
2.末口径(すえくちけい)と元口径(もとくちけい)
電柱は上に行くほど細くなるテーパー構造(1/75勾配など)をしています。
- 末口径(すえくちけい)
-
電柱の最頂部(一番上)の直径(外径)。190mm、210mmなどが標準。アーム(腕金)や金物を取付ける際のバンドサイズ(電柱バンド径)の選定基準となります。
- 元口径(もとくちけい)
-
電柱の最下部(一番下)の直径。根入れ穴の開削径(穴の太さ)を決定する基準となります。
3.設計荷重(kN/kgf)の考え方
電柱の最頂部にどれだけの引っ張り荷重(曲げモーメント)まで耐えられるかを示す数値です。
| 設計荷重(kN) | 相当重量(kgf) | 現場での選定基準・主な用途 |
| 2.0 kN | 約 200 kgf | 低圧専用柱、軽量な引き込み線のみの支持物。 |
| 3.5 kN | 約 350 kgf | 高圧引込柱(1号柱)の標準。 PAS(開閉器)や小容量トランスを自吊りする場合。 |
| 5.0 kN | 約 500 kgf | 重量の大きい変圧器(トランス複数台)や、電線の引張張力が大きい屈曲点の電柱。 |
| 7.0 kN 〜 10.0 kN | 約 700〜1000 kgf | 配電幹線の幹線柱、長尺架空線、耐張型の重要電柱。 |
設計荷重の計算が必要な理由は、電線を張る(架線)した際の、張力が関係します。ぱっと見は細いですが、数十mともなると、その重さは数10キロにもなります。(電線の太さにもよります)どんな電線が乗っているのかは以下の記事を参考にしてください。
3. 根入れ深さの計算基準と「1/6ルール」
建柱工事において、電柱が倒壊しないよう地中に埋め込む深さを「根入れ(ねいれ)深さ」と呼びます。「電気設備技術基準の解釈 第138条」により、厳格な基準が定められています。
基本ルール:「全長の1/6以上」
設計荷重が6.86kN(700kgf)以下の一般的なコンクリート柱の場合、原則として全長の「6分の1以上」地中に埋設しなければなりません。
| 電柱の全長(L) | 計算式(L/6) | 必要根入れ深さ(D) | 地上露出高さ |
| 9.0 m | 9.0 ÷ 6 | 1.5 m 以上 | 7.5 m |
| 10.0 m | 10.0 ÷ 6 | 1.7 m 以上(実務上1.7m〜1.8m) | 8.3 m |
| 12.0 m | 12.0 ÷ 6 | 2.0 m 以上 | 10.0 m |
| 13.0 m | 13.0 ÷ 6 | 2.2 m 以上(実務上2.2m) | 10.8 m |
| 15.0 m | 15.0 ÷ 6 | 2.5 m 以上 | 12.5 m |
| 16.0 m | 16.0 ÷ 6 | 2.7 m 以上(実務上2.7m) | 13.3 m |
【例外ルール:高荷重柱・軟弱地盤の場合】
- 設計荷重が 6.86kN(700kgf)を超える場合
- 全長にかかわらず、根入れ深さは2.5m以上(または規定の加算計算)が必要です。
- 水気のある湿地・軟弱地盤の場合
- 1/6計算値に対して、さらに0.3m〜0.5m程度深く根入れするか、後述する「根巻きコンクリート」の補強が必須となります。
4. 根巻きコンクリート・支線(タイワイヤー)が必要な判定基準
電柱は、ただ穴を掘って埋め戻すだけでは、地盤の支持力不足や不平衡な電線張力によって傾斜・倒壊を起こす危険があります。そのため現場では「根巻き」や「支線」による補強を行います。
【支線(タイワイヤー)】
/│
/ │ ← 【電柱本体】
/ │
/ │
────────────────/────┼───────────────── [地表面]
[アースアンカー] │
└── 【根巻きコンクリート】
1. 根巻き(ねまき)コンクリートの施工基準
電柱の地際(地上と地中の境目)周辺をコンクリートで固め、地盤との接触面積を増やして倒れにくくする施工法です。
- 根巻きが必要となる主な現場条件
- 水田、湿地、盛土などの地盤支持力が低い(軟弱な)場所。
- 引込柱(1号柱)で、一方からのみ強い電線張力がかかる場所。
- PASや重量物トランスを柱上に設置し、偏荷重がかかる場所。
- 根巻きコンクリートの施工標準寸法
- 厚み: 電柱の外周から10cm 〜 15cm 以上の肉厚。
- 深さ(高さ): 地表面から地中に向かって1.0m 〜 1.5m 程度(地表上部にも10cm程度盛る)。
根巻きはコンクリートブロックのほか、鉄板型やモルタルを流し込む方法など多岐にわたります。その土地の地盤によっては、何もしなくても電柱が沈んでいく地域もあるため、電柱の底にコンクリートブロックを敷く場合もあるため、施工する際は統一されたルール通りではなく現場ごとに最適な施工方法が求められます。
2. 支線(タイワイヤー・アースワイヤー)の必要性と施工ルール
電柱に一方方向からの強い引張荷重がかかる場所(耐張柱・角柱・終端柱)では、根入れだけでは耐えきれないため、反対側からワイヤーで引っ張る「支線(アースワイヤー)」を設置します。
- 支線の設置角(取り角度)
-
原則として電柱に対して30度以上(標準45度)の角度で地面へ引っ張ります。
- アースアンカー(地足)
-
地中に打込むアンカー(鋼板アンカー・ブロックアンカー)は、引張荷重に耐えられる埋設深さ(通常1.5m以上)を確保します。
- 支線用絶縁碍子(玉碍子)
-
万が一の漏電時に地表へ高電圧が降下するのを防ぐため、地上高さ2.5m以上の位置に必ず玉碍子(絶縁碍子)を挿入します。
5. 建柱工事の実務フローと現場チェックポイント
電柱を実際に建てる「建柱工事」は、重量物を扱う高所・土木作業となるため、安全管理と施工順序の徹底が求められます。
[1. 掘削] ──► [2. 吊り上げ・挿入] ──► [3. 垂直確認] ──► [4. 埋戻し・転圧] ──► [5. 根巻き/支線]
(建柱車) (クレーン揚重) (下げ振り/レベル) (30cmごとの突固め) (必要に応じて)
ステップ1:穴掘建柱車(建柱車)による開削
オーガー(螺旋状の掘削刃)を搭載した建柱車を用い、所定の根入れ深さ+10cm程度の穴を垂直に掘削します。地下埋設物(水道管・ガス管・既設ケーブル)がないか、事前に試掘(手掘り)で確認します。
ステップ2:電柱の吊り上げと建設(差込み)
電柱の重心位置(全長の上から約40%〜45%付近)に玉掛けワイヤーを掛け、建柱車のクレーンで吊り上げて開削穴へ静かに挿入します。
ステップ3:垂直度の確認(下げ振り・レベル測定)
穴に入れた状態で、直交する2方向から「下げ振り(さげふり)」または「トランシット(測量機)」を用いて、電柱が完全に垂直(90度)立っているかをミリ単位で確認します。
ステップ4:埋戻しと「段階的転圧(突固め)」
ここが施工品質を左右する一番のポイントです。
掘削した土を一度にすべて埋め戻してはなりません。「30cm埋め戻すごとに、突棒(ランマーや突固め棒)で周りを強固に転圧する」作業を繰り返します。転圧が不十分だと、雨が降った際に土が締まって電柱に対する土圧が緩み、傾く原因になります。
6. まとめ:電柱規格の正しい理解が安全な受電設備の第一歩
- 電柱の長さは11m〜15m、設計荷重は高圧引込で「3.5kN以上」が標準。
- 根入れ深さは「全長の1/6以上(標準)」を絶対死守する。
- 軟弱地盤や偏荷重がかかる場所では「根巻きコンクリート」や「支線(玉碍子付き)」を設置する。
- 埋戻し時の「30cmごとの段階転圧」が電柱の傾斜・倒壊を防ぐ現場の鉄則。
電柱の規格選定と根入れの基本ルールを正しく把握し、台風や地震にも揺るがない安全で強固な受変電設備・配電線を構築しましょう。