高圧受電設備(キュービクル)の地絡保護において、屋外のPAS/SOGと並び重要となるのが盤内に設置される「DGR(地絡方向継電器)」です。
しかし、年次点検や竣工試験の現場では、
- 「ZCTにケーブルを通す向き(k/l)を逆にしてしまった…」
- 「高圧ケーブルのシールド接地線をZCTにどう通せばいいのか分からない」
- 「構外地絡(隣の事業所の事故)なのに、自社のDGRがもらい事故でトリップした」
といったトラブルが絶えません。DGRの誤作動や不動作の原因の8割以上は、ZCT・ZPTの結線ミスやシールド接地の施工ミスによるものです。
本記事では、JIS C 4609(高圧地絡方向継電器)、内線規程、高圧受電設備規程に準拠し、ZCTの貫通方向、シールド接地線の正しい処理方法、ZPTの極性、現場での試験手順までをファクトベースで徹底解説します。
1. DGR(地絡方向継電器)の原理とZCT・ZPTの役割
単なる地絡過電流継電器(GR)と違い、DGRは「地絡電流の向き(方向)」を判別して動作します。
① なぜ「方向」の判別が必要なのか?
高圧対地浮遊容量(ケーブルの静電容量)が存在するため、構外(電力会社側や隣の事業所)で地絡事故が起きた際にも、自社のケーブルを通って充電電流(進み電流)が流れます。
- GR(方向なし):電流の大きさだけで判定するため、構外事故の充電電流に反応して「もらい事故トリップ(不要遮断)」を起こす。
- DGR(方向あり):地絡電流(I0)と地絡電圧(V0)の「位相(ベクトル関係)」を監視し、事故が「自社構内」で起きた場合のみ遮断信号を出す。
【DGRの構成要素】
ZCT(零相変流器) ──── 零相電流(I₀)を検出
+ ├─ 2つのベクトル(位相差)から事故方向を判別!
ZPT(零相電圧検出器)── 零相電圧(V₀)を検出
2. ZCT(零相変流器)の配線実務:貫通方向(k-l)とシールド接地処理
ZCTの配線において、現場で最も間違いが多いのが「貫通方向」と「高圧ケーブルのシールド接地線の通し方」です。
① 貫通方向のルール:電源側(k)➔ 負荷側(l)
ZCTの銘板には必ず「k」と「l」が表記されています。
- k側:電源側(高圧引き込み側・電源側)
- l側:負荷側(変圧器・高圧機器側)
必ず高圧ケーブルを「k側から挿入し、l側へ引き抜く」ように貫通させます。向きを逆に(l➔k)通してしまうと、検出される零相電流の位相が180度反転するため、「構内地絡で動かず、構外地絡で誤作動する」という最悪の状態になります。
② 【最重要】高圧ケーブルのシールド接地(アース線)の通し方
高圧CVTケーブル等の銅テープ遮蔽層(シールド)から取る接地線(D種接地)の処理には、明確な物理ルールが存在します。
【パターンA:ZCTの「電源側(k)」でシールドを接地する場合】
➔ 接地線はZCTを「通さずに」直接接地端子へ接続する。
【パターンB:ZCTの「負荷側(l)」でシールドを接地する場合(現場で一般的)】
➔ 接地線を一度ZCTの中に「折り返して通し直してから」接地端子へ接続する!
なぜ「折り返し」が必要なのか?
高圧ケーブル内部で地絡事故が起きると、地絡電流は「芯線」を通って事故点へ行き、遮蔽銅テープ(シールド)を通って接地線へと戻ってきます。
もしZCTより負荷側でシールド接地を取る際、接地線をそのまま接地端子へ繋ぐと、「芯線を流れる事故電流」と「シールドを戻る地絡電流」がともにZCTを通過するため、磁束が相殺されて$I_0$がゼロと検知されてしまいます。
接地線をZCTの中に反対向きにくぐらせる(折り返す)ことで、シールドを戻る電流の磁束を打ち消し、正しい地絡電流のみをZCTに検知させることができます。
3. ZPT(零相電圧検出器)の結線と極性合わせ
地絡電圧(V0)を検出するZPT(零相電圧検出器:Zero-phase Voltage Threshold Device)またはEVT(接地形計器用変圧器)の結線も、位相判定の基準となる重要な部分です。
① ZPTの端子構成と接続
高圧三相母線(R・S・T)にZPT本体を接続し、二次側端子からDGRへ電圧信号を送ります。
- 一次側:高圧母線(R, S, T)およびアース(E)に接続
- 二次側:DGRの電圧入力端子(P1, P2 や y1, y2 などメーカー指定端子)に接続
② 極性ミスの影響
二次側配線の極性が反転(P1とP2が逆接続)すると、DGRが認識する零相電圧の基準位相が180度ズレてしまいます。この場合もZCTの逆貫通と同様に、構内事故で不動作、構外事故で誤作動の原因となります。
4. 現場でのDGR試験実務(竣工・年次点検)
DGRが正常に動作するか確認するため、現場では専用の「地絡多機能試験器(地絡位相試験器)」を用いて以下の試験を実施します。
現場で実施する主な5大試験項目
- 1.最小動作電流試験(感度電流試験)
-
V0(電圧)を一定(例:定格の20%等)印加した状態で、I0(電流)をゼロから徐々に増やし、DGRが動作する最小電流(設定値:一般に0.1A〜0.2A等)を測定する。
- 2.最小動作電圧試験(感度電圧試験)
-
I0(電流)を一定印加した状態で、V0(電圧)を徐々に増やし、動作する最小電圧(設定値:一般に5%〜10%等)を測定する。
- 3.動作時間試験
-
定格の400%の電流および規定電圧を急変印加し、トリップ信号が出るまでの時間(標準設定:0.1秒〜0.2秒以内)を測定する。
- 4.位相特性試験(進み・遅れ感度角測定)
-
I0とV0の位相差を変化させ、DGRが動作する「動作範囲(感度角:一般に最大感度角45°を中心とした範囲)」を測定し、不動作範囲で正しくロックされるか確認する。
- 5.慣性不動作試験
-
遮断器の投入時等に発生する瞬間的な過渡電圧・電流で誤作動しないか確認する。
📖 【高圧試験】高圧ケーブルの直流耐圧試験(DC22kV)と漏れ電流測定はこちら
➔ 【電技解釈・JIS C 3605】高圧ケーブルの直流耐圧試験(DC22kV)と漏れ電流測定|試験手順・放電処理と水トリー劣化診断
5. 現場トラブルシューティングと安全管理
構外地絡で自社DGRが誤作動した時のチェックリスト
- [ ] ZCTの貫通方向:k(電源側)➔ l(負荷側)の向きになっているか?
- [ ] シールド接地の折り返し:ZCTの負荷側で接地を取る際、接地線がZCTを逆くぐりしているか?
- [ ] DGRの位相設定:最大感度角の設定(標準:進み45°等)がメーカー指定通りか?
- [ ] ZPT二次側配線:極性(P1/P2等)の誤接続はないか?
【重要注記】現場での最終判定について
※本記事に記載の結線方式・試験値・設定値は、JIS C 4609および一般的なメーカー(オムロン・三菱電機・戸上電機製作所・オムロン等)の標準仕様に基づくものです。
現場での施工・試験にあたっては、導入機器の付属結線図、メーカー取扱説明書、および管轄の電気主任技術者・保安協会の指示を必ず優先してください。
まとめ:正しい結線と位相確認が事故を防ぐ
盤内DGRは、地絡事故時の波及事故を防ぐ命綱です。
- ZCT貫通方向:電源側を「k」、負荷側を「l」とし、k ➔ l にケーブルを通す。
- シールド接地:ZCTより負荷側で接地を取る場合は、必ずZCTに接地線を折り返して通す。
- 位相判定:ZPTの極性とZCTの位相合わせにより、構内事故のみを確実に遮断する。
配線施工時・点検時には必ずこの3点を再確認し、信頼性の高い高圧受電設備を維持しましょう!
📖 【高圧受電設備】LBS(高圧交流負荷開閉器)とPFの選定・全相交換ルールはこちら
➔ 【内線規程・JIS C 4620】LBS(高圧交流負荷開閉器)とPF(電力ヒューズ)の選定・溶断対策