自家用電気工作物(6.6kV高圧受電設備)の引込線や構内幹線で使われる「6.6kV CVTケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)」。
現場の設計や施工管理において、「単に負荷電流(アンペア)から電線サイズを選んで終わり」にしていませんか?
高圧ケーブルの実務では、許容電流だけでなく「短絡時熱容量(事故時の溶断限界)」の計算が不可欠です。さらに現場では、サイズが決まった後にも「配管径の選定」「吊りワイヤーの手配」「端末処理」「引き込み時の許容張力」「竣工前の耐圧試験」など、数々の実務ハードルが待ち受けています。
本記事では、初心者から現場担当者まで、この記事1本で計算から現場の手配・施工・検査までを漏れなく完結できる「実務の全手順」を完全網羅解説します。
1. 高圧ケーブルサイズ選定「3つの必須ステップ」
高圧配電ケーブルのサイズ選定は、以下の3ステップを順番に確認し、「3つの条件をすべてクリアする最も太いサイズ」を採用します。
【高圧ケーブルサイズ選定の3ステップ】
[STEP 1] 許容電流の確認(連続して流せる電流に耐えられるか?)
↓
[STEP 2] 電圧降下の確認(受電点からキュービクルまでの電圧低下は許容内か?)
↓
[STEP 3] 短絡時熱容量の計算【最重要】(事故時の大電流でケーブルが溶けないか?)
2. 【STEP 1】許容電流(連続許容電流)と環境補正
まずは、平常時に流れる負荷電流(アンペア)に対してケーブルが耐えられるかを確認します。
6.6kV CVTケーブルの許容電流早見表
以下は、JIS C 3606および電線メーカー資料に基づく「6.6kV CVTケーブルの空中敷設(周囲温度40℃)」における許容電流の目安です。
| 導体サイズ | 許容電流(空中・1条敷設) | 主な用途・適用目安 |
| 22 sq | 115 A | 小規模事業所、小容量トランスの引込 |
| 38 sq | 155 A | 中規模ビル、数100kVAクラス |
| 60 sq | 205 A | 1,000kVAクラスの需要家 |
| 100 sq | 275 A | 大型ビル、工場などの主引込線 |
| 150 sq | 345 A | 大容量設備 |
| 200 sq | 415 A | 特高からの変電・特大需要家 |
| 250 sq | 475 A | 幹線系統 |
「現場の注意:環境補正(低減係数)の掛け忘れに注意!」
- 周囲温度補正:キュービクル内やピット内など、周囲温度が45℃〜50℃に達する場所では補正係数(0.91〜0.82)を掛けて許容電流を減らします。
- 多条敷設補正:ラックやダクト内に複数条並べて布設する場合、熱がこもるため「低減係数(2条並列なら0.85程度)」を乗算して計算します。
3. 【STEP 2】電圧降下(許容電圧降下)の確認
受電点(責任分界点)からキュービクルまでの距離が長い場合、ケーブル自体の抵抗による電圧低下を確認します。
- 許容値の基準
-
高圧受電の場合、受電点から変圧器一次側までの電圧降下は「定格電圧の2%以内(6.6kVに対して約132V以内)」に抑えるのが一般的です。
- 現場の目安
-
6.6kV系統は高電圧・低電流のため、敷設距離が100m程度までであれば電圧降下がサイズ選定のボトルネックになることは稀です。ただし、「200m〜300mを超える長距離配線(広大な工場敷地や屋外構内配線等)」では、電圧降下によるサイズアップが必要です。
💡合わせて読みたい電圧降下の計算って複雑でなかなか手が出ませんよね。しかし、なんとなくで径種を上げるわけにも下げるわけにもいきません。以下の記事では、電圧降下の計算をできる限り簡略化する方法を紹介しています。ケーブルの径種選定に役立ててください。
4. 【STEP 3】最重要!短絡時熱容量(短絡電流)の計算
高圧ケーブル選定で最も事故トラブルに直結するのが、このSTEP 3です。
平常時の電流がたった20A程度であっても、電源側の短絡容量によっては「22sqや38sqでは短絡熱容量が不足し、事故時にケーブルが瞬時に溶断・爆発する危険」があります。
では短絡時熱容量の計算公式を見てみましょう。

S = (I × √t) ÷ 0.143
- S : 必要最小導体サイズ [mm²](sq)
- I : 想定最大短絡電流 [kA](キロアンペア)
- t : 遮断器が電流を遮断するまでの時間 [秒](保護継電器動作時間 + 遮断器全遮断時間)
- 0.143 : 架橋ポリエチレン銅導体の熱容量定数
【計算条件】
- 電源側の想定最大短絡電流(I): 12.5 kA
- 過電流継電器(OCR)+ VCBの全遮断時間(t): 0.2 秒
【計算手順】
- 公式に代入: S = (12.5 × √0.2) ÷ 0.143
- √0.2 ≒ 0.4472 より、 S = (12.5 × 0.4472) ÷ 0.143 = 5.59 ÷ 0.143 ≒ 39.09 mm²
【判定結果】
計算結果は「39.09 sq」となります。
規格サイズ(22, 38, 60, 100…)に当てはめると、「38 sq ではわずかに不足する(39.09 > 38)ため、安全に 60 sq を選定しなければならない」という結論になります。
5. 【プロの実務】計算に必要な「I と t」の現実的な入手・設定手法
教科書には「I = 12.5 kA、t = 0.2 秒とする」と書かれていますが、実務現場でこの数字をどこから入手するのかを解説します。
1. 短絡電流 I の入手方法(電力会社との事前協議)
- 協議回答書の確認
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電力会社(一般送配電事業者)へ提出する「買電・受電事前協議」の回答書に、「受電点における電源側インピーダンス」または「想定最大短絡容量(MVA / kA)」が記載されています。
- 標準的な見込み値
-
回答書が届く前の計画段階では、高圧系統の一般的な最大値として「12.5 kA」(または地域の系統によっては 20 kA)を安全側の仮定値として設定して一次計算を行います。
2. 遮断時間 t の決定と「保護協調」の罠
- 0.2秒の内訳
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過電流継電器(OCR)の瞬時要素動作時間(約0.05〜0.1秒)+ VCB(真空遮断器)の開路時間(約0.03〜0.08秒)+ 安全裕度 = 「約0.2秒」と設定するのが標準です。
- 保護協調の罠
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上位系統(PASのSOGや電力会社リレー)との保護協調をとるため、「OCRのタイマー(限時要素)を意図的に遅らせている現場(例:0.5秒〜1.0秒に設定)」では、遮断時間 t が大きくなり、必要スケアが跳ね上がるため注意が必要です。
6. 【選定後の実務 1】地中埋設(エフレックス管径・埋設深さ)
サイズが決まったら、次は現場の配線ルートに応じた周辺資材の手配に移ります。
| CVTケーブルサイズ | ケーブル外径(目安) | FEP管(エフレックス)推奨呼び径 |
| 22 sq | 約 31 mm | 50 φ(曲がりが多い場合は 65 φ) |
| 38 sq | 約 35 mm | 65 φ |
| 60 sq | 約 40 mm | 80 φ |
| 100 sq | 約 47 mm | 100 φ |
| 150 sq | 約 53 mm | 100 φ |
管径選定のルール
通線時の引っ張り抵抗を減らすため、「ケーブル一括外径の1.5倍〜2倍以上」の内径を確保します。屈曲点(曲がり)が多い場合は2倍以上(ワンサイズ上)を選定するのが現場の鉄則です。
埋設深さの法的基準(電気設備技術基準)
- 車両その他の重量物の圧力を受ける場所(駐車場・構内道路等):「1.2m 以上」
- その他の場所(歩道・緑地等):「0.6m 以上」・埋設標識シート:埋設管の上部10cm〜20cmの位置に「危険 高圧電力線」と書かれた埋設標識シートを並行して埋設します。
7. 【選定後の実務 2】架空配線(メッセンジャーワイヤー・ハンガー)
屋外で架空配線(電柱間や建屋間)を行う場合の手配ルールです。
- メッセンジャーワイヤー(吊り鋼線)の選定
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CVTケーブルは自重が重いため、自己支持できません。亜鉛めっき鋼線(メッセンジャーワイヤー)に吊り下げます。CVT 38sq〜60sq の場合、メッセンジャーワイヤーは「45 sq 〜 55 sq(亜鉛めっき鋼線 7/3.2 等)」を選定します。
- ケーブルハンガーの取付間隔
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ケーブルの垂れ下がりを防ぐため、ハンガーの取付間隔は「50cm 以下(規格上は50cm以内)」に設定します。
8. 【選定後の実務 3】端末処理キット・端子ボルト・接地処理
ケーブルの両端(キュービクル側・PAS側)を接続するための資材手配です。
1. 端末処理キットの選定(屋内用 vs 屋外用)
- 屋内用(T-3等)
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キュービクル内部など、雨水がかからない場所で使用。
- 屋外用(J-3等)
-
電柱上のPAS一次側/二次側や、屋外開放型設備で使用。雨水の浸入を防ぐ「傘(耐塩害水切り構造)」が付いています。
2. 圧縮端子のボルト穴径確認
高圧ブッシングや機器端子に接続する「2つ穴(または1つ穴)銅圧着・圧縮端子」の手配時、「接続相手のボルト径(M10 か M12 か)」を必ず事前に採寸します。
3. 遮蔽銅テープの「接地処理(A種/D種)」
CVTケーブルの外周にある遮蔽銅テープ(アース線)は、静電誘起電圧の防止と地絡電流の帰還路として極めて重要です。端末処理キット付属の「コンスタントフォーススプリング(半田レススプリング)」を正しく巻き付け、確実にキュービクルの接地バー(A種またはD種接地)へ接続します。
9. 【現場施工の罠】引き込み張力と盤内離隔距離トラブル
施工管理者が現場で直面しやすい「失敗例」と対策です。
1. 許容張力と管路用滑剤(ケーブルスベール)
太いCVTケーブルを長尺のFEP管へ引き込む際、無理な力で引っ張ると導体が伸びたり、コーナー部で外皮が押し潰されて絶縁破壊を起こします。
対策として、ケーブルの先端には必ず「ケーブルグリップ(金網)」および「引き込み用スイベル(よじれ防止金具)」を装着し、管路内には「ケーブルスベール(通線用滑剤)」を十分に塗布して摩擦抵抗を下げます。
もし坂上からケーブルを下ろしていく場合、潤滑剤を使ってしまうととんでもない速さでケーブルが滑り落ちてくることがあります。状況によって、必要な量を使用するようにしましょう。
2. サイズアップに伴う「盤内離隔距離」の壁
短絡熱容量計算により「38sq ➔ 60sq」へサイズアップした場合、ケーブルが太く硬くなります。
失敗例を挙げると、古いキュービクルの導入開口部(グランドプレート)に入らない、あるいはケーブルの最小曲げ半径(外径の6倍以上)が確保できず、相間絶縁距離が取れなくなるトラブルが発生します。事前に盤内の引き込みスペースとブッシング位置を採寸しておくことが不可欠です。
10. 【検査・試運転】布設前後メガー測定と直流耐電圧試験
配線作業が完了しても、試運転前の検査をクリアするまでは気を抜けません。
【高圧ケーブル施工時の検査ステップ】
[ドラム入庫時] ➔ ① 敷設前メガー測定(1,000Vメガーで初期絶縁確認)
↓
[引き込み完了] ➔ ② 敷設後・端末処理前メガー測定(通線時の外皮損傷がないか確認)
↓
[端末処理完了] ➔ ③ 竣工検査:直流耐電圧試験(10,350V・10分間印加)
- 敷設前後の2回メガー
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ドラムから引き出した直後と、FEP管に通し終えた直後の「2回」メガーを振ることで、万が一傷が入った場合に「ドラム納品時の不具合か、引き込み作業中の事故か」を明確に切り分けられます。
- 直流耐電圧試験
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6.6kV回路の竣工前検査として、「試験電圧 10,350V(定格の1.5倍)を10分間印加」して漏れ電流を測定し、絶縁の健全性を証明します。
『絶縁耐圧試験』と『絶縁抵抗測定』を勘違いしないようにしましょう。高圧ケーブルに1000vで1分印加するのは「絶縁抵抗測定』で、年次点検などに用いられる点検方法です。
キュービクルの機器や高圧ケーブルを年次点検するときは「絶縁抵抗測定」を行いますが、基準を満たす抵抗値を把握できていますか?忘れがちな基準値をこの際に確認しておきましょう。
まとめ:選定から現場手配までを一気通貫で完結させよう
6.6kV高圧CVTケーブルの実務ポイントをまとめます。
- サイズ選定は「許容電流」「電圧降下」「短絡時熱容量」の3ステップ。
- 短絡時熱容量公式 「S = (I × √t) ÷ 0.143」 で最小スケアを必ず試算する。
- サイズ決定後は、エフレックス管径(外径の1.5〜2倍)、吊りワイヤー(45〜55sq)、端末キット(屋内/屋外)まで一括手配する。
- 引き込み時は滑剤を使用し、布設前後メガーと直流耐電圧試験(10,350V・10分)で施工品質を担保する。
計算根拠と現場手配の知恵をセットで網羅し、事故のない確実な高圧配線工事を実現しましょう!
📜 根拠となる規格・公的出典
・電線規格:JIS C 3606「6000V架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル」
・技術基準:経済産業省「電気設備技術基準の解釈」第134条・第135条(地中電線路の施設)
・標準規格:日本電気協会「内線規程」 / JCS 4348「高圧架橋ポリエチレンケーブルの短絡許容電流」