自家用高圧受電設備(6.6kV受電)の安全運用において、最も重要とされる安全装置がSOG制御装置(地絡保護機能付形高圧交流負荷開閉器用制御装置)と、それに連動する各種高圧開閉器(PAS・UGS)です。
万が一、自設備内で高圧ケーブルの絶縁劣化や機器の破損による地絡・短絡事故が発生した際、このSOGが正しく動作しなければ、近隣一帯を巻き込む「波及事故(大規模停電)」を引き起こす危険性があります。
この記事では、SOGおよびPAS・UGSの基礎構造から、GR(無方向性)とDGR(方向性)の原理的違い、現場でSOGがトリップした際の事故点特定手順、年次点検における保護協調まで、高圧受電設備の実務知識を一気に網羅して解説します。
1. SOGと波及事故の基礎知識
自家用高圧受電設備において、電力会社の配電線と需要家設備との境界を「責任分界点」と呼びます。この責任分界点(またはその直近)に設置され、構内事故が外の配電線へ拡大するのを防ぐのがSOG制御装置の役割です。
構内の高圧機器やケーブルで地絡(漏電)や短絡(ショート)事故が発生した際、構内の保護装置が作動しないと、電力会社の変電所や配電線の遮断器が直接作動してしまいます。これにより、事故を起こした需要家だけでなく、同じ配電線から受電している近隣の工場・ビル・一般家庭まで一斉に停電する「波及事故」へ発展し、甚大な損害賠償リスクを負うことになります。
2. SOG開閉器(PAS・UGS)の種類と構造比較
SOGシステムは、電路の事故(電流・電圧の変化)を検出するセンサーを内蔵した「開閉器本体」と、その信号を受けて自動で切り離し処理を行う「SOG制御装置(操作箱)」が対になって機能します。
現場の引込形態(架空か地中か)によって設置する開閉器の種類が異なり、各機器の特徴や検出用センサーの役割は以下の通りまとめられます。
| 機器名称 | 主な設置環境 | 絶縁媒体・構造 | 内蔵センサーと主な役割 |
| PAS(気中負荷開閉器) | 架空引込方式(第一柱の腕金部) | 空気絶縁(屋外防雨構造) | ZCT:零相電流(地絡電流)の検出 VT:零相電圧および制御電源の確保 |
| UGS / UAB(地中化用開閉器) | 地中引込方式(キャビネット・借室) | SF6ガスまたは真空絶縁 | ZCT:零相電流(地絡電流)の検出 VT:零相電圧および制御電源の確保 |
架空線から引き込む一般的な現場では、電柱上で開閉状態を目視確認できるPASが広く採用されています。一方で、都市部や再開発地域などの地中配電エリアでは、コンパクトで耐水性に優れたUGS(またはUAB)がキャビネット内や受電室に配置されます。
いずれの開閉器も、内部に組み込まれた零相変流器(ZCT)で微少な漏れ電流を拾い、変圧器(VT)で電圧の歪みを測定することで、電路の異常をリアルタイムに監視しています。
3. GR(地絡)とDGR(方向性地絡)の動作メカニズム
SOG制御装置が地絡事故を検知する仕組みには、大きく分けて「GR(無方向性)」と「DGR(方向性)」の2種類が存在します。両者の最大の違いは、事故が「自分の敷地内」で起きたものか、「外の電力会社側」で起きたものかを識別できるかどうかにあります。
GR(無方向性)
GR(無方向性)は、ZCTが検知した零相電流(Io)の大きさだけで動作を判断します。構成がシンプルで導入コストを抑えられる反面、敷地内の高圧ケーブルが長い現場や近隣の工場で地絡事故が起きた場合、自社のケーブルが持つ対地静電容量(コンデンサ効果)を通じて電流が流れ込んでしまい、自社の開閉器が誤って遮断してしまう「もらい事故(不要遮断)」を引き起こすデメリットがあります。
DGR(方向性地絡継電器)
このもらい事故を防止するために開発されたのがDGR(方向性地絡継電器)です。DGRは電流(Io)の大きさだけでなく、VTから得られる零相電圧(Vo)との位相差(ベクトルの向き)を演算します。事故電流が「構内から構外へ流れているのか」それとも「外部から構内へ流れ込んでいるのか」を正確に識別できるため、長尺ケーブルを抱える施設であっても、自社原因の事故時のみピンポイントで作動させることが可能です。
SO(過電流ロック)機能
また、SOG制御装置を語る上で欠かせないのが「SO(過電流ロック)機能」です。PASやUGSはあくまで「負荷電流を安全に開閉するためのスイッチ」であり、短絡(ショート)事故時に流れる数千アンペアという爆発的な電流を自力で遮断する能力(遮断容量)を持っていません。短絡電流が流れている最中に無理やりPASを開放しようとすると、内部で強力なアーク放電が発生して開閉器自体が破裂・爆発してしまいます。
そこでSOGには、一定以上の大電流を検知した際、あえて開閉器にロックをかけて開放させず、上位にある電力会社の遮断器に事故電流を切らせた後(電路が無電圧になった瞬間)に安全にPASを開放するSO機能が標準搭載されています。
4. 【実務】SOGがトリップして全停電した際の現場特定手順
現場で「SOGが作動して施設全体が停電した」という緊急呼び出しを受けた際、現場代理人・電気管理技術者が踏むべき事故調査のフローです。
- SOG制御装置の表示確認:操作箱のターゲット表示(「GR」点灯=地絡事故、「SO」点灯=短絡事故または過電流)を確認する。
- 不用意な再投入の禁止:地絡原因(ケーブル破壊・水没・小動物の接触等)が除去されないままPASを再投入(リセット)すると、再度波及事故を起こす恐れがあります。
- 高圧メガー(絶縁抵抗計)による事故点切り分け:主開閉器・CBを開放し、「受電線路(PAS二次側〜キュービクル一次側)」と「キュービクル構内母線・変圧器」を切り離した上で、定格1000Vまたは2000Vの高圧メガーを用いて対地絶縁抵抗値を測定します。
5. PAS・SOGの施工基準と設置工事のポイント
現場でPASやSOG制御装置を新規設置・更新する際は、電力会社ごとの受電内規や電気設備技術基準に基づいた正確な施工が求められます。
電柱上の取り付け位置においては、腕金(装柱)の強度や道路・他線類との離隔距離の確保が欠かせません。PAS本体は自重(約30〜50kg)があるため、専用の支持金物を用いて確実に取り付け、開閉操作用ロープが地上から安全に操作できる位置(地上高4.5m〜5m程度)に垂れ下がるよう配慮します。
開閉器本体と地上付近のSOG制御箱を結ぶ制御ケーブル(キャブタイヤケーブル)の敷設も重要です。風圧や振動による断線、鳥害や紫外線による劣化を防ぐため、電柱に固定する際はステップボルトへの巻き付けを避け、サドルや耐候性結束バンドを用いて規定ピッチで固定します。また、SOG制御箱本体の設置高さ(地上から1.8m〜2.0m前後)や、箱底面の水抜き穴・水切り処理、A種接地(10Ω以下)の施工手順を遵守することで、雨水の侵入による制御基板の誤動作や感電事故を未然に防ぐことができます。
6. 保護協調と年次点検(継電器試験)のポイント
受電設備内の変圧器や高圧幹線を守るOCR(過電流継電器)と、上位のSOG、さらに上位の電力会社変電所遮断器が、適切な動作時間差で切り離される関係を「保護協調」と呼びます。
末端の事故は末端のヒューズや遮断器で即座に遮断し、SOGや上位遮断器へ影響を及ぼさないよう動作特性(反時性・定時性)を正しく整定することが基本です。
年次点検時には専用のSOG試験器を使用し、動作感度電流(0.1A〜0.3A)や動作時間(0.1秒〜0.2秒)、DGRの位相判定が整定値通りに正しく作動するかを厳しく確認します。
7. まとめ:SOGの正しい理解と管理が現場の安全を担保する
- SOGの使命: 自社構内の地絡・短絡事故を自設備内で確実に遮断し、地域一帯への波及事故を防ぐ。
- 機種選定: ケーブル長や構内環境に応じ、もらい事故を防ぐ「DGR(方向性)」を適切に選定・管理する。
- トラブル時: SOG動作時はあわてて再投入せず、高圧メガーを用いて受電線路と構内設備の切り分け調査を徹底する。
高圧受電設備の実務や保護協調の仕組みを正しく把握しておくことは、事故対応だけでなく、現場代理人・技術者としての確固たる信頼に直結します。