「カタログに『1.6mmは27AまでOK』と書いてあるから、20Aブレーカーの回路に繋いでおけば問題ない」
もし現場でこの認識のまま施工していると、後から「配管内の電線被覆が熱でベタベタに溶け、引き直しも抜くこともできない」「夏場になるとブレーカーは落ちないのに焦げ臭い匂いが漂う」という深刻なトラブルを引き起こします。
電線カタログに記載されている許容電流は、あくまで「周囲温度30℃・空中暗線1本敷設」という最高条件下の数値に過ぎません。実際の現場では、電線管(金属管・PF管)への複数通線や、夏場に50℃を超す天井裏の熱環境による「許容電流の低下」を計算に組み込むことが義務付けられています。
本記事では、電気設備技術基準解釈第146条および内線規程第3105節の法的根拠に基づき、許容電流の基本数値、電流減少係数の選び方、アース線・中性線の実務上のカウント判断、そして現場での具体的な計算ステップを完全解説します!
現場で必要な「許容電流」「電圧降下」「ブレーカー選定」を一気通貫で確認したい方は、まず以下の完全ガイド(まとめ記事)をご確認ください。
1. 許容電流の定義と最高許容温度(法的根拠)
電線の許容電流とは、電線に電流が流れた際に発生するジュール熱(I²R)によって、絶縁被覆が劣化・溶解しない限界の電流値のことです。
絶縁体の材質によって「最高許容温度(連続使用できる限界温度)」が定められており、これを超えると絶縁破壊を起こして漏電・火災に直結します。
被覆材質ごとの最高許容温度(電技解釈第146条)
| 電線・ケーブルの種別 | 絶縁体の材質 | 最高許容温度 | コスト感(価格・施工性) | 主な用途・特徴 |
| IV線 / VVFケーブル | 600Vビニル(PVC) | 60℃ | 安価・施工性◎(最もリーズナブルで取り回しやすい) | 一般住宅・ビルの室内配線用。熱に弱い。 |
| HIV線 | 耐熱性ビニル | 75℃ | 中程度(IVより少し高い) | 盤内配線や少し熱を持つ場所用。 |
| CVケーブル / CVT | 架橋ポリエチレン(XLPE) | 90℃ | 高価(VVFの約1.5〜2倍以上の材料費+硬いため手間がかかる) | 幹線配線・屋外配線用。耐熱性・許容電流が非常に高い。 |
💡 現場の疑問:「じゃあ全部CVTで配線すれば良くない?」
スペックだけを見れば「耐熱90℃で許容電流も大きいCVTを全館に使えば、熱暴走の心配もなくて最強では?」と思うかもしれません。
しかし、実際の現場でそれをやらない理由は「圧倒的なコストの差」です。
- 材料費が跳ね上がる:CV/CVTケーブルは、同サイズのVVFケーブルに比べて材料単価が約1.5倍〜2倍以上高価です。
- 施工工賃(人件費)が上がる:CVケーブルは被覆が非常に硬く、端末処理(皮むけ)や狭い場所での取り回しに時間がかかるため、施工の手間(人工代)が増加します。
そのため、過酷な熱環境ではない一般的な住宅やオフィスの室内配線であれば、コストパフォーマンスに優れたVVFケーブルを基本として使い、50℃を超える爆熱の天井裏や、大電流が流れるメインの幹線部分だけピンポイントでCVTに切り替えるのが、施工品質と現場予算を両立させるプロの設計テクニックです。
2. 電線の基本許容電流一覧表(周囲温度30℃)
以下は、内線規程第3105節に示されている、周囲温度30℃における単一配線(暗線1本)時の基本許容電流 I0 です。
| サイズ(単線 / より線) | 断面積 [mm²] | IV線(600Vビニル) [A] | VVF(2心) [A] | VVF(3心) [A] | CV(単心) [A] | CV(3心) [A] |
| 1.6mm | 2.07mm² | 27 | 24 | 19 | – | – |
| 2.0mm | 3.14mm² | 35 | 32 | 24 | – | – |
| 2.6mm | 5.30mm² | 48 | 42 | 34 | – | – |
| 2.0mm² | 2.00mm² | 19 | – | – | 27 | 20 |
| 3.5mm² | 3.50mm² | 27 | – | – | 37 | 29 |
| 5.5mm² | 5.50mm² | 35 | – | – | 49 | 39 |
| 8.0mm² | 8.00mm² | 42 | – | – | 61 | 49 |
| 14.0mm² | 14.00mm² | 61 | – | – | 88 | 70 |
| 22.0mm² | 22.00mm² | 80 | – | – | 115 | 92 |
| 38.0mm² | 38.00mm² | 113 | – | – | 162 | 130 |
表の数値をただ眺めるだけでなく、数値の裏にある「熱の性質と現場のルール」を理解しておくと、施工や設計でのイージーミスが一気に激減します。
ポイント1:「2心」よりも「3心」の方が許容電流が低くなる理由
同じ1.6mmのVVFケーブルでも、2心は24Aなのに対し、3心は19Aまで下がります。
- 理由:ケーブル内部で3本の線がシース(外被)の中に密着して固められているため、真ん中の電線から発生した熱が外に逃げにくく、熱がこもりやすいからです。
- 現場の注意点:単相3線式回路や、3路スイッチの渡り線などで3心(VVF 1.6-3C)を使用する場合、「1.6mmだから20Aまで余裕」と思い込んでいると、基本数値の段階で20Aを下回っている(19A)ため注意が必要です。
ポイント2:超危険!「2.0ミリ(単線)」と「2.0スケア(より線)」の混同事故
現場で一番初心者や若手がやってしまいがちな大事故が、「ミリ(単線)」と「スケア(より線)」の混同です。
- 2.0mm(単線):断面積に換算すると 約3.14mm² あります(基本許容電流:IVで35A)。
- 2.0mm²(より線):断面積はその名の通り 2.00mm² です(基本許容電流:IVで19A)。
つまり、「2.0ミリ」は「2.0スケア」よりも大幅に太く、約1.8倍も電流を流せるのです。
現場で「ここ2スケ(2.0mm²)で配線しておいて」と言われた場所に、勝手に勘違いして2.0mmの単線用の感覚で大電流を流したり、逆に「2ミリ(2.0mm)」が必要な20A回路に「2スケ(2.0mm²)」を引っ張ってくると、許容電流不足(19Aしか耐えられない)で完全に施工不備となります。
- 目安の覚え方:
- 1.6mm(単線) ≒ 断面積 2.07mm²(2.0mm²より少し太い)
- 2.0mm(単線) ≒ 断面積 3.14mm²(3.5mm²〜5.5mm²の中間相当)
ポイント3:単線のIV線より、VVFケーブルの方が数値が低く設定されている理由
同じ1.6mmであっても、IV線単体(空中1本)なら27A流せますが、VVF(2心)になると24Aに落ちます。
IV線は絶縁被覆(ビニル)1重だけですが、VVFケーブルは各線の絶縁被覆の上に、さらに全体を包むグレーの「シース(外被ビニル)」が被せられています。このシースが服を1枚多く着ているような状態を作り出し、放熱を阻害するため、あらかじめ基本許容電流が低く制限されているのです。
3. 電流減少係数(K)と現場配線の落とし穴
同一の電線管(金属管・合成樹脂管・PF管など)の中に複数の電線を収容して通線する場合、相互の発熱が管内にこもるため、基本許容電流に電流減少係数(K)を掛け算して数値を低減させなければなりません。
管内収容本数による電流減少係数(内線規程3105-1表)
| 同一管内の電線本数(電圧線・中性線) | 電流減少係数(K) |
| 3本以下 | 0.70 |
| 4本 | 0.63 |
| 5本 〜 6本 | 0.56 |
| 7本 〜 15本 | 0.49 |
【現場実務】アース線・中性線のカウントルール
減少係数を掛ける際、「何本としてカウントするか」で現場の判断が分かれるポイントです。
① 保護接地線(アース線:緑)の扱い
- 結論:本数カウントから除外(0本扱い)してOKです。
- 理由:アース線は漏電時や異常時にしか電流が流れないため、平常時に熱を発しないからです(電技解釈第146条解説)。
- 注意点:ただし、配管内の詰め込み制限(電線占有率32%以下)を計算する「物理的な容積」には当然含める必要があります。
💡アース線は発熱しないため本数カウントから除外できますが、接地工事自体の施工ルールや抵抗値の計算は正しく行う必要があります。
[D種接地工事の施工ルールと省略条件の解説はこちら]
[変圧器二次側のB種接地抵抗の計算手順はこちら]
② 単相3線式・三相4線式の中性線の扱い
- 単相3線式:平衡負荷であれば中性線に流れる電流はキャンセルされますが、実務上は不平衡(アンバランス)が発生するため、中性線も「1本」としてカウントするのが原則です。
- 三相3線式:3本とも常時電流が流れるため、当然「3本」としてカウントします。
💡単相3線式では不平衡(アンバランス)により中性線にも電流が流れます。不平衡時の異常電圧や事故例についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
[【単相3線式・三相】中性線に流れる電流の計算方法と断線時の異常電圧を徹底解説!]
4. 周囲温度補正(Kt)の適用と爆熱天井裏対策
電線を設置する場所の周囲温度が30℃を超える場合、以下の補正公式(Kt)を用いて許容電流をさらに低減させます。
周囲温度補正公式
- 最高許容温度:IV線は60℃、CV線は90℃
- 周囲温度:設置場所の予測最高温度 [℃]
現場実務:50℃の工場天井裏でIV線とCV線を比較
夏場の金属屋根の工場や、断熱材のすぐ上の天井裏は簡単に50℃近くまで達します。
- IV線(最高60℃)の場合Kt = √[ (60 - 50) ÷ (60 - 30) ] = √(10 ÷ 30) ≒ 0.577➔ 許容電流が約58%(ほぼ半減)まで落ちてしまいます。
- CV線(最高90℃)の場合:Kt = √[ (90 - 50) ÷ (90 - 30) ] = √(40 ÷ 60) ≒ 0.816➔ 許容電流の低下は約82%にとどまります。
【現場の鉄則】:周囲温度が高くなる過酷な現場や屋根裏を通る幹線には、サイズを無闇に太くするよりも、耐熱温度の高いCVケーブルを選定する方がトータルコストも下がり施工性も向上します。
💡高圧受電設備(キュービクル)周辺や幹線で扱う6.6kV高圧CVTケーブルのサイズ選定・耐圧試験・施工実務についてはこちらをご覧ください。
[6.6kV高圧CVTケーブル選定・手配・施工完全マスターガイド:サイズ計算から周辺資材・引き込み・耐圧試験まで]
5. 【完全版】現場のステップバイステップ計算実務
現場でよく遭遇する3つのパターンについて、適合・不適合の判定をステップ順に検証します。
ケース1:2.0mm(IV線)を金属管に4本通して20Aブレーカーに接続する場合
ステップ1(基本許容電流の確認)
2.0mm IV線の基本許容電流 I0 = 35A
ステップ2(電流減少係数の乗算)
管内本数4本のため、減少係数 K = 0.63補正後許容電流 = 35A × 0.63 = 22.05A
ステップ3(ブレーカー定格との比較)
回路の配線用遮断器定格は 20A。
補正後もブレーカー定格(20A)を上回っているため、安全に使用できます。
ケース2:1.6mm(IV線)をPF管に4本通して20Aブレーカーに接続する場合
ステップ1(基本許容電流の確認)
1.6mm IV線の基本許容電流 I0 = 27A
ステップ2(電流減少係数の乗算)
管内本数4本のため、
ステップ3(ブレーカー定格との比較)
回路の配線用遮断器定格は 20A。
解説:20Aまで流れる回路に対して、電線は17.01Aまでしか耐えられません。過負荷時にブレーカーが落ちる前に電線が熱暴走して被覆が溶けるため、現場では2.0mm以上への変更が必須となります。
💡 あわせて読みたい
分岐回路における配線用遮断器の容量と電線サイズの定格組み合わせや、モーター負荷が混在する幹線の1.25倍/1.1倍ルールについては以下の記事で解説しています。
ケース3:周囲温度45℃の環境で、CVT 14mm²(3心)を使用する場合
ステップ1(基本許容電流の確認)
CV(3心)14.0mm² の基本許容電流 I0 = 70A
ステップ2(周囲温度補正係数 Kt の算出)
CV線の最高許容温度は90℃、周囲温度45℃より、
ステップ3(補正後の許容電流計算)
周囲温度45℃の環境下では、この幹線の許容電流は 60.62A として設計・選定を行う必要があります。
💡 あわせて確認したい現場の罠
電線の許容電流をクリアしていても、配線距離が長い現場では「電圧降下(ドロップ)」によって機器が誤作動・停止するトラブルが多発します。許容限界率(2%〜7%)や簡易計算式(35.6/17.8/30.8)の使い分けは以下の記事で詳しく解説しています。
6. まとめ:許容電流選定の現場ルール
- 基本数値:カタログ値(30℃・空中1本)をそのまま過信しない!
- 減少係数:管内通線時は「3本以下:0.70」「4本:0.63」「5〜6本:0.56」を必ず乗算する!
- アース線:電流減少係数の本数からは除外してOK(占有率計算には入れる)!
- 高温環境:夏場の天井裏や爆熱現場には、サイズアップよりも耐熱90℃のCVケーブルが特効薬!