高圧受電設備(キュービクル)を管理する中で、最も緊張感が高まるトラブルの一つが「SOG(DGR)の動作による高圧地絡遮断」です。
地絡事故が発生すると、事業所内の停電にとどまらず、最悪の場合は地域一帯を停電させる「波及事故」に発展する危険性があります。そのため、事故発生時には安全かつ迅速に事故箇所(高圧ケーブル、各種機器)を特定し、切り離す手順が求められます。
「SOGが動作したとき、まず何から確認すべき?」「高圧メガーを使った事故点の切り分け手順を知りたい」という電気主任技術者やメンテナンス担当者向けに、安全確認から高圧絶縁抵抗測定の手順、事故原因の特定と復旧フローまで詳しく解説します!
関連法令: 経済産業省『電気設備技術基準の解釈』第14条・第15条(PDF)
高圧電路の絶縁抵抗値および絶縁耐力試験に関する基準(使用電圧6,000V級における絶縁抵抗値の規定)が定められています。
・ 準拠規格: 日本産業標準調査会(JISC)JIS C 4601(高圧受電用地絡方向継電装置)
SOG(DGR)の動作特性、零相電流・零相電圧の検出感度、および波及事故防止のための規格が規定されています。
・ 指針・規程: 日本電気協会『内線規程』/ 自家用電気工作物保安管理規程
年次点検および事故発生時の点検・測定手順、安全措置の推奨基準となっています。
1. 6.6kV系統における地絡事故とSOG(DGR/PAS)の役割
6.6kV高圧受電設備において、構内で地絡事故(電路と大地が接触して電流が漏れ出る事故)が発生した際、一番手前で事故を検知して遮断するのがSOG(Switch Operating Group)です。
・ PAS(高圧気中開閉器): 構外(電柱上)の引き込み口に設置された開閉器本体
・ DGR(地絡方向継電器): 地絡電流と零相電圧(ZCT・ZTPT経由)を検知し、PASへトリップ指令を出すリレー
構内の地絡事故時に電力会社の配電用変電所(遮断器)が落ちる前に、構内側でピンポイントで遮断することで、他事業者や周辺地域を巻き込む波及事故を防ぐのがSOGの最も重要な役割です。
💡 ワンポイント解説
DGR(地絡方向継電器)は、単に「漏れ出た電流の大きさ」だけでなく、「電流の向き(方向)」も判定しています。これにより、自社の構内で発生した本物の事故だけに反応し、他社の地絡事故による「もらい事故」での誤動作を防いでいます。
SOGは機能に応じて様々な種類があります。PASと呼ばれることもあり、いまいち正確に理解している人は少ないのではないでしょうか?SOGについて詳しくまとめた記事を参考にしてください。
・ [関連記事] SOGって開閉器?PASとの違いや動作を解説
2. SOG動作時の初期対応と安全確保の手順
SOGがトリップして全停電した場合、あせって焦発的にPASを投入したり、いきなり測定を開始するのは非常に危険です。以下の手順で確実に安全を確保します。
STEP 1:現場の状況確認と二次災害の防止
・ SOG制御箱の「地絡表示(DGR動作ランプ)」が点灯しているか確認する
・ 異臭、異音、煙、設備の目視異常(雷害痕や小動物の侵入など)がないかキュービクル内を確認する
STEP 2:無電圧の確認と安全措置
- SOGの引き綱で開放状態にし、指針の確認を行う
- 高圧母線および測定対象回路が完全に無電圧であることを高圧検電器で確認する
- 残留電荷による感電を防ぐため、安全接地を取り(電荷の放電)、測定準備を整える
※実体験
過去台風によって市内の各所が停電に見舞われた時のことです。電力会社との打ち合わせのもと、復旧箇所の送電は工事完了後との了承をもらったものの、系統操作担当者までの伝達がうまくいかず、作業中に送電されたことがありました。
安易に工事が完了したからと、すぐに送電作業に入っては絶対にいけません。すべての人員が工事完了し、送電の旨の了承を得てから送電するようにしてください。
3. 高圧絶縁抵抗測定(メガー)による事故点の切り分け手順
目視で原因が特定できない場合、高圧絶縁抵抗計(1,000Vまたは2,000Vメガー)を用いて、どの区間で地絡が発生しているかを段階的に切り分けていきます。




変圧器の絶縁測定は、一次側同士・一次側と外箱・二次側と外箱と測定箇所が複数あります。測定箇所によってかける電圧が異なる場合がありますので、十分に注意しましょう。
切り分け測定の具体的手順
段階1:キュービクル一次側(高圧引込ケーブル)の測定
- キュービクル内の主開閉器(LBSやVCB)を開放(OFF)にする
- PAS二次側(キュービクル側)と高圧ケーブルの一次側間で絶縁抵抗を測定する・ 判定基準: 高圧ケーブルおよび一次側電路の絶縁抵抗値が6MΩ以上(できれば数十MΩ以上)あるか確認・ 0MΩまたは著しく低い場合: 高圧引込ケーブルの絶縁破壊(水トリー等)または頭部処理の不具合が原因と判定
段階2:高圧母線および機器類の個別測定
- 主開閉器(LBS等)を開放したまま、二次側の高圧母線・各高圧機器の絶縁抵抗を測定する
- 値が低い回路がある場合、高圧フューズを抜く、または変圧器・進相コンデンサ等の一次側電線を順次外して個別測定を行う
※実体験
SOGから負荷側で事故が発生したのであれば、大抵はケーブルが原因なことが多いです。他の機器はキュービクルや電気室の中にあるため、雨風の影響を受けないため、耐用年数にも大きな差があります。
しかし、ケーブルは端末処理時の水の混入や遮蔽銅の接触など、地絡事故につながってしまう人為的ミスが起こりやすいからです。キュービクル内の機器に焦げた跡がないのであれば、まずはケーブルを疑いましょう。
4. 判定基準と原因特定後の復旧フロー
高圧電路の絶縁抵抗値は、法令・公的規格および実務上、以下の数値を基準として良否判定を行います。
・ 一括測定時の目安: 6MΩ以上(『電気設備技術基準の解釈』上の下限値)
・ 健全な高圧機器・ケーブルの目標値: 100MΩ以上(新品や良好な状態では数千MΩ以上を示します)
原因特定から再投入までの流れ
- 事故箇所の切り離し: 絶縁不良が特定された機器や回路(例:不良の進相コンデンサ等)を電路から切り離す
- 健全区間の絶縁再確認: 異常回路を切り離した状態で、残りの健全区間全体の絶縁抵抗が十分(100MΩ以上など)であることを再測定する
- 送電指示と再投入: 安全を確認後、SOG制御箱のリセットボタンを押し、PASを投入して受電を復旧する
- 不良機器の修繕計画: 切り離した事故機器の修繕・交換手配を行う
まとめ:手順通りの切り分けで安全かつ迅速に事故復旧を!
高圧地絡事故が発生した際のポイントを整理します。
・ SOG(DGR)の役割: 構内地絡を迅速に遮断し、波及事故(地域停電)を防ぐ
・ 安全第一: 高圧検電器による無電圧確認と残留電荷の放電(安全接地)を徹底する
・ 切り分け手順: PAS二次側 ➔ 高圧ケーブル ➔ 母線 ➔ 個別機器の順に高圧メガーで段階測定する
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