MENU
カテゴリー

【なぜ危険?】CT(変流器)の2次側開放で高電圧が発生する理由と正しい対策を徹底解説!

電気設備の保守点検や試験現場、第一種電気工事士・電験三種の試験において、必ずと言っていいほどCT(変流器)の2次側は絶対に開放してはならないと叩き込まれます。

しかし、「なぜ開放すると危険なのか?」「内部で何が起きているのか?」という仕組みを根本から理解できている方は意外と少なく、暗記だけで済ませてしまいがちです。

本記事では、CTの2次側開放によって数千ボルトの異常高電圧が発生する物理メカニズム、発生する3大リスク、そして現場で事故を防ぐための絶対ルールを分かりやすく解説します!

目次

1. そもそもCT(変流器)とは?なぜ2次側を開放してはいけないのか

CT(Current Transformer:変流器)は、大電流が流れている高圧回路などから、計測器(電流計や電力計)や保護継電器(OCRなど)で安全に扱える小電流(定格2次電流は一般的に5Aまたは1A)に変換(変流)する機器です。

電気理論上、変圧器(トランス)の一種ですが、一般的なトランスとは動作原理の前提が大きく異なります。

項目一般の変圧器(VT・PT含む)CT(変流器)
主目的電圧を変換する(定電圧源)電流を変換する(定電流源)
1次側接続電線間に並列に接続する電線(主回路)に直列に接続する
1次電流の決定2次側の負荷によって1次電流が変わる負荷に関係なく、主回路の電流で強制的に決まる
2次側の常態開放(オープン)が基本(短絡は短絡事故になる)短絡(ショート)が基本(開放は高電圧事故になる)

💡 最大のポイント CTの1次電流I1は、2次側がどうなっていようと「回路を流れる負荷電流そのもの」によって強制的に流され続けます。これが2次側開放時の危険を生み出す根本原因です。

2. なぜ2次側を開放すると高電圧が発生するのか?(物理メカニズム)

なぜ2次側を開放するだけで、数千ボルトもの高電圧が発生してしまうのでしょうか。その原理は「磁束の打ち消し合い(逆起電力)が消えるから」です。

【通常時】2次電流が1次側の磁束を「打ち消している」

通常動作時、1次電流I1によってCTの鉄心内に磁束φ1が生じます。すると電磁誘導により2次側に2次電流I2が流れ、このI21次側の磁束を強力に打ち消す方向の磁束φ2を発生させます。

結果として、鉄心内の合成磁束φ=φ1ーφ2は非常に小さな値(わずかな励磁磁束のみ)に保たれ、2次側に生じる電圧(誘起起電力)は数ボルト程度の安全な値に収まっています。

通常時の合成磁束:φ=φ1ーφ2≒極小

開放時】打ち消しが消え、鉄心が過剰に「磁気飽和」する

ここで2次回路を開放(切断)すると、2次電流がゼロ(I2 = 0)になります。すると、これまであった打ち消し磁束φ2が一瞬で消滅します。

しかし、1次電流I1は主回路から強制的に流し込まれ続けるため、1次電流のすべてが鉄心を磁化させる「励磁電流」へと変わってしまいます。

  1. 鉄心が猛烈に磁化(過大磁束の発生)
  2. 鉄心の許容量を超えて「磁気飽和(過大磁束)」を起こす
  3. 磁束の変化速度(dφ/dt)が急激になり、ファラデーの電磁誘導の法則(e = -N dφ/dt)により、2次端子間に数千ボルト(kV級)の鋭い波形の異常高電圧が発生する

3. 2次側開放が引き起こす「3大リスク」

2次側開放によって発生する高電圧は、現場において極めて重大な事故を引き起こします。

① 現場作業者の「感電事故(人命の危険)」

CTの2次端子や、そこに接続された配線に数千ボルトの電圧がかかるため、作業者が触れると感電・死傷事故つながります。高圧回路に直接触れていなくても、計器の裏側などで感電する危険があります。

② 絶縁破壊による「火災・短絡事故」

CTの2次側配線や端子台は、普段数ボルト程度の電圧しか想定していません(耐圧は通常数千V程度)。そこに数kVの急激なサージ電圧がかかると、配線の絶縁が破壊(スパーク)し、火災や相間短絡事故を引き起こします。

③ CT自体の「焼損・破壊」

鉄心内に過大な磁束が通り続けることで、鉄心に大きな「過流損(渦電流)」と「ヒステリシス損」が発生し、CT自体が猛烈に発熱・焼損します。また、過大磁束の振動によりCTから異常音(「ゴー」「ジー」という唸り音)が発生します。

4. 現場での安全対策と正しい作業手順

電流計の交換、測定器の脱着、配線変更などでCT回路を扱う際は、「絶対に2次側を開放させない手順」を徹底しなければなりません。

対策1:作業時は必ず「CT 2次側を短絡(ショート)」する

CTの2次回路から電流計などを取り外す場合は、機器を取り外す「前」に、必ずCTの2次端子間を短絡線(ジャンパー線)でショートさせます。

「なぜ短絡しても大丈夫なの?」という疑問 〜 一般の電源(定電圧源)を短絡すると大電流が流れてショート事故になりますが、CT(定電流源)は短絡しても定格電流(最大でも5A程度)しか流れないため安全です。

対策2:CTテスト端子(CTショートブロック)の活用

高圧受電設備(キュービクル)などの制御盤には、安全に試験や計測ができるよう「CTテスト端子(CTT)」が設置されています。

プラグを抜き差しする際、内部メカニズムによって「2次側を短絡してから計器を分離する」という構造になっているため、これらを正しく操作・使用することが基本となります。

💡 あわせて読みたい

高圧変圧器の混触事故を防ぎ、低圧側の安全を守る「B種接地抵抗値の計算方法(150/300/600の条件分岐)」については、こちらの記事で詳しく解説しています。

あわせて読みたい
【B種接地抵抗値の計算方法】150/I系の公式と条件分岐(300・600)を徹底解説! B種接地抵抗値の計算方法を徹底解説!基本公式「150/I」から、遮断器の動作時間(1秒・2秒以内)による条件分岐(300/I・600/I)、地絡電流の端数切り上げルールや5Ω規定まで網羅。第一種電気工事士や電験三種の試験・実務で迷わない判定フロー付き。

5. 試験対策!覚えておくべきポイントまとめ

第一種電気工事士や電験三種などの試験では、以下のような形で問われます。

試験での問われ方正解のポイント
「CTの2次側を開放するとどうなるか?」2次側に異常高電圧が発生し、絶縁破壊や感電の危険が生じる。
「なぜ高電圧が発生するのか?」2次電流による磁束の打ち消しがなくなり、鉄心の磁束密度が著しく高くなるため。
「CTの2次回路で作業するときの注意点は?」2次回路を開放せず、あらかじめ2次端子を短絡(ショート)させてから作業する。

まとめ:CTの2次側は「開けずに絞めろ(短絡)」が鉄則!

CT(変流器)は、一般的なトランスとは正反対の特性を持つ機器です。

  • PT(計器用変圧器):2次側は開放が基本(短絡禁止!)
  • CT(変流器) :2次側は短絡が基本(開放禁止!)

この違いをしっかり頭に入れ、「2次側を開放すると磁束の打ち消しが消えて数千Vの危険な電圧が出る」というメカニズムを覚えておけば、試験でも現場でも迷うことはありません。

正しく理解して、安全な電気工事・点検作業を徹底しましょう!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

10年以上の電気工事経験のノウハウや知識を皆様に提供しています。
第二種電気工事士・第一種電気工事士・1級電気工事施工管理技士
その他:乙種危険物などの資格所持
所属している北海道の電気工事会社『(株)佐々木電設』にて、高圧受電設備の更新や新設工事を承っております。ホームページからご連絡ください。
https://sasaki-dennsetsu.com/

目次