電気設備の設計・保守や、第一種電気工事士・電験三種の試験において避けて通れないのが「進相コンデンサ(高圧進相コンデンサ)の容量計算」です。
「力率を80%から95%に改善するためのコンデンサ容量 QCはいくらか?」「kvarからμF(ファラド)へはどう変換すればいいのか?」といった問題で頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、力率改善の基本メカニズムから、容量計算公式QC= P(tanθ1ーtanθ2)のわかりやすい導出、実践的な計算パターン、静電容量Cへの変換方法まで徹底解説します!
1. なぜ進相コンデンサで力率を改善するのか?
工場やビルで使われるモーターやトランス(誘導性負荷)は、動作するために「遅れ無効電力」を消費します。この遅れ無効電力が増えると回路の力率(cosθ)が低下してしまいます。
力率が低下すると、以下のデメリットが生じます。
- 電線や変圧器に無駄な電流が流れる(配線損失や電圧降下の増大)
- 電気料金が高くなる(電力会社の力率割引・割増制度)
そこで回路に並列に「進相コンデンサ」を接続し、進み無効電力を供給することで、負荷が要求する遅れ無効電力を打ち消し(相殺)、力率を100%(1.0)に近づけるのです。
| 項目 | 力率改善前(コンデンサなし) | 力率改善後(コンデンサあり) |
| 無効電力 | 遅れ無効電気がそのまま電源から流れる | コンデンサが遅れ無効電力を打ち消す |
| 視在電力(kVA) | 大きい(設備容量を圧迫) | 小さくなる(設備に余裕ができる) |
| 配線損失(I^2・R) | 電流が大きいため損失大 | 電流が減るため損失激減 |
進相コンデンサを設置して力率を改善する大きなメリットの1つが「配線電流の減少による電圧降下の抑止」です。配線長や電線の太さから電圧降下を割り出す「簡易計算式(35.6 / 30.8 / 17.8)」の解説はこちら。
2. 進相コンデンサ容量 QC [kvar] の計算公式
力率を cosθ1 から cosθ2 に改善するために必要な進相コンデンサの容量 QC [kvar] は、以下の基本公式で求められます。
QC = P × (tanθ1 – tanθ2) [kvar]
(※ P : 有効電力 [kW]、cosθ1 : 改善前の力率、cosθ2 : 改善後の目標力率)
公式の導出(直角三角関数で一瞬で理解!)
電力ベクトル図(直角三角形)をイメージすると、この公式は一発で覚えられます。
- 改善前の無効電力 Q1: Q1 = P × tanθ1
- 改善後の無効電力 Q2: Q2 = P × tanθ2
- 必要なコンデンサ容量 QC: QC = Q1 – Q2 = P × tanθ1 – P × tanθ2 = P × (tanθ1 – tanθ2)
なお、tanθ = sinθ / cosθ = 根号(1 – cos^2θ) / cosθ のため、力率(cosθ)から直接求めて代入します。

3. 実践!計算問題パターン解説
試験や実務でよく出題される2つのパターンで計算手順を確認しましょう。
パターン1:標準問題(力率を80%から100%へ改善)
【問題】 有効電力 P = 120 kW、改善前の力率が 80%(遅れ)の三相負荷がある。この回路の力率を 100% に改善するために必要な進相コンデンサの容量 QC [kvar] を求めよ。
【解説】
- 改善前の tanθ1 を求める: cosθ1 = 0.8 のとき、sinθ1 = 0.6 となるため、 tanθ1 = 0.6 / 0.8 = 0.75
- 改善後の tanθ2 を求める: 力率 100%(cosθ2 = 1.0)を目指す場合、無効電力はゼロ(sinθ2 = 0)なので、 tanθ2 = 0
- 公式に代入して計算する: QC = 120 × (0.75 – 0) = 90 [kvar]
答: 90 kvar
パターン2:応用問題(力率を80%から95%へ改善)
【問題】 有効電力 P = 100 kW、改善前の力率が 80% の負荷の力率を 95% まで改善したい。必要なコンデンサ容量 QC [kvar] を求めよ。(※ cosθ = 0.95 のとき tanθ ≒ 0.329 とする)
【解説】
- 各 tanθ の確認:
- tanθ1 = 0.6 / 0.8 = 0.75
- tanθ2 = 0.329
- 公式へ代入: QC = 100 × (0.75 – 0.329) = 100 × 0.421 = 42.1 [kvar]
答: 約 42.1 kvar
4. 静電容量 C [uF] への変換公式(三相デルタ結線)
電験三種などの試験では、容量 QC [kvar] ではなく、コンデンサ1相あたりの静電容量 C [uF] を問われることがあります。
高圧進相コンデンサは通常「デルタ(Δ)結線」で接続されます。
三相線間電圧を V [V]、周波数を f [Hz](ω = 2 × 円周率π × f)とすると、コンデンサ全容量 QC [var] と静電容量 C [F] の関係は以下の通りです。
QC = 3 × ω × C × V^2 [var]
これを C について解くと、以下の変換式が得られます。
C = QC / (3 × ω × V^2) = QC / (6 × π × f × V^2) [F]
⚠️ 計算の注意点! 公式に代入する際、QC は [kvar] ではなく [var](1000倍) に変換し、C を [uF](マイクロファラド)で答える場合は 100万倍(10^6倍) することを忘れないようにしましょう!
5. 現場実務での重要注意点(直列リアクトルとフェランティ効果)
現場で進相コンデンサを設置・運用する際は、単に容量計算をするだけでなく以下の2点に配慮が必要です。
① 直列リアクトル(SR)の設置(高調波対策)
高圧受電設備(キュービクル)では、進相コンデンサに必ず「直列リアクトル(Series Reactor)」を直列に接続します。
- 目的: インバータ設備などから発生する「第5高調波」による電圧波形のひずみ防止と、電源投入時の突入電流防止。
- 容量: コンデンサ容量の 6%(L = 6%)のリアクトルを設置するのが標準です。
コンデンサ投入時の突入電流や高調波対策は、変圧器の励磁突入電流対策とも深く関連しています。 [関連記事] 【なぜ起きる?】変圧器の励磁突入電流(インラッシュ電流)のメカニズムと5つの対策を徹底解説!
② 軽負荷時のフェランティ効果(進み力率による電圧上昇)
夜間や休日など負荷が軽い(受電電流が少ない)状態で進相コンデンサを接続したままにすると、長距離配線の対地静電容量と合わさって受電端電圧が送電端電圧より高くなる「フェランティ効果」が発生します。
変圧器の過励磁や設備の絶縁劣化の原因となるため、軽負荷時は自動力率調整装置(APQC)等でコンデンサを切り離す制御を行います。

6. 力率改善の計算マスターで試験も実務も完全攻略
進相コンデンサの容量計算は、公式を丸暗記するのではなく「直角三角形のベクトル図(P × tanθ)」を頭の中に描けるようになると、どんな応用問題が出ても迷わなくなります。
- 基本式:QC = P × (tanθ1 – tanθ2) [kvar]
- tanθ の求め方:tanθ = sinθ / cosθ(例:cosθ=0.8 のとき tanθ=0.75)
- 静電容量変換:QC = 3 × ω × C × V^2
- 実務の必須知識:6%直列リアクトルの設置とフェランティ効果の防止
受電設備全体の安全設計には、B種接地抵抗の計算や変流器(CT)の正しい扱いも不可欠です。あわせてチェックしておきましょう。
公式とポイントをしっかり整理して、現場の実務や第一種電気工事士・電験三種の試験に役立ててください!