第一種電気工事士や電験三種の試験で頻出する「V結線(V-V結線)」。
試験問題で「出力比は 1 / √3 ≒ 57.7%」「利用率は √3 / 2 ≒ 86.6%」と暗記させられますが、「なぜ2台使っているのに容量が2倍ではなく √3倍(1.73倍)にしかならないのか?」 という疑問を置き去りにしてしまいがちです。
本記事では、V結線の仕組みから、出力が √3倍になるベクトル的理由、出力比と利用率の導出、メリット・デメリットまで分かりやすく解説します!
1. そもそもV結線(V-V結線)とは?
V結線とは、2台の単相変圧器を組み合わせて、三相交流電源を供給する結線方式のことです。
本来、三相交流を作るには3台の単相変圧器(デルタ-デルタ結線など)が必要ですが、以下のようなケースでV結線が使われます。
- デルタ-デルタ結線のうち1台が故障した際の「応急運転」
- 将来的に負荷が増えることを見越した「初期投資の抑制(軽負荷運用)」
| 結線方式 | 変圧器の台数 | 供給できる電力(三相出力) |
| デルタ-デルタ 結線 | 3台 | 3 × P1(1台分の容量の3倍) |
| V-V 結線 | 2台 | √3 × P1(1台分の容量の √3倍 ≒ 1.73倍) |
変圧器を2台使っているなら、出力は2台分(2倍)になりそうなものです。なぜ √3倍(約1.73倍) に落ちてしまうのでしょうか?
2. なぜ出力が「√3倍」になるのか?(ベクトルの位相差)
変圧器1台あたりの定格電圧を V、定格電流を I、1台あたりの容量を P1 = V × I とします。
単相変圧器を2台使ったV結線において、三相電力 PV を求める基本公式は以下の通りです。
PV = √3 × V × I = √3 × P1
電圧と電流に「30度の位相差」が生じるメカニズム
単相変圧器を2台直列気味に繋ぐV結線では、線間電圧と線電流を各トランスにそのまま流すことになります。
このとき、負荷の力率が 100%(cosθ = 1.0)であったとしても、各変圧器の内部を流れる電流と生じる電圧の間に 30度の位相差(ずれ)が発生してしまいます。
- V結線の1台目の変圧器に生じる電力:PA = V × I × cos(30度) = V × I × (√3 / 2)
- V結線の2台目の変圧器に生じる電力:PB = V × I × cos(-30度) = V × I × (√3 / 2)
- 2台の合計出力 PV:PV = PA + PB = V × I × (√3 / 2) + V × I × (√3 / 2) = √3 × V × I = √3 × P1
変圧器自体の「力率」が位相差30度によって cos(30度) = √3 / 2 ≒ 0.866 に低下してしまうため、2台あっても 2 × 0.866 = √3 ≒ 1.732倍 の出力しか出せないのです。

V結線の出力(√3倍)と同様に、三相3線式の電圧降下簡易式「e = 30.8 × L × I / (1000 × S)」にも √3(17.8 × 1.732 ≒ 30.8)が隠れています。各種配線方式の公式導出メカニズムはこちら。
3. 「出力比」と「利用率」の違いと覚え方
試験で最も混同しやすいのが「出力比」と「利用率」の計算です。違いを明確に整理しておきましょう。
① 出力比:57.7%(1 / √3)
「デルタ結線(3台)で運転していた時と比べて、V結線(2台)にすると出力は何%になるか?」 という比率です。
出力比 = PV / Pデルタ = (√3 × P1) / (3 × P1) = 1 / √3 ≒ 0.577 (57.7%)
💡 覚え方
3台あったものが2台(V結線)になったら、元のパワーの約6割(57.7%)に落ちると覚えます。
② 利用率:86.6%(√3 / 2)
「手元にある2台の設備容量(2 × P1)に対して、実際に取り出せる電力(√3 × P1)は何%か?」 という設備利用の効率です。
利用率 = PV / (2 × P1) = (√3 × P1) / (2 × P1) = √3 / 2 ≒ 0.866 (86.6%)
💡 覚え方: 2台のトランスは、位相のズレ(cos30度)のせいで能力の**約87%(86.6%)**しか発揮できないと覚えます。
| 項目 | 定義 | 計算式 | 数値 |
| 出力比 | デルタ結線時(3台)との比較 | V結線容量 / デルタ結線容量 = (√3 × P1) / (3 × P1) | 1 / √3 ≒ 57.7% |
| 利用率 | 変圧器2台の定格容量との比較 | V結線容量 / 設備容量(2 × P1) = (√3 × P1) / (2 × P1) | √3 / 2 ≒ 86.6% |
4. V結線のメリット・デメリット
V結線は緊急時や初期投資抑制に優れる反面、運用の注意点もあります。
メリット
- 緊急対応ができる〜デルタ-デルタ結線の1相がバンク事故・点検で壊れても、残りの2台で三相供給を継続できる。
- 初期費用を抑えられる〜将来的に需要が増える予定の現場で、最初は2台(V結線)でスタートし、増工時に3台目を入れてデルタ結線に移行できる。
デメリット
- 設備効率が落ちる〜利用率が 86.6% に低下するため、定格一杯まで使えない。
- 中性点を接地できない〜1次側・2次側ともに中性点がないため、接地方式に工夫が必要。
- 電圧のアンバランス(相不平衡)〜負荷の大きさによっては三相電圧のバランスが崩れやすい。
5. 試験でよく出る計算問題パターン
【問題】
容量 50 kVA の単相変圧器が3台あり、デルタ-デルタ結線で運転していた。このうち1台が故障したため、残りの2台をV結線にして緊急運転を行った。
- V結線で供給できる最大三相電力 [kVA] を求めよ。
- このときの出力比 [%] を求めよ。
【解説】
- 最大供給電力 PV の計算:PV = √3 × P1 = √3 × 50 ≒ 1.732 × 50 = 86.6 [kVA]
- 出力比の計算:元のデルタ結線時の容量 Pデルタ = 3 × 50 = 150 kVA であるため、出力比 = (86.6 / 150) × 100 ≒ 57.7%
答: 1. 最大供給電力: 86.6 kVA / 2. 出力比: 57.7%
まとめ:数値の裏にある「位相差30度」を押さえよう!
V結線のポイントは、丸暗記ではなく「位相のずれ」から理解することです。
- V結線の最大出力: √3 × P1(変圧器1台分の √3倍)
- 出力比(デルタとの比較): 1 / √3 ≒ 57.7%
- 利用率(設備能力との比較): √3 / 2 ≒ 86.6%
変圧器や受電設備の運用では、V結線の知識だけでなく、トラブルを防ぐ保護回路や計算も重要です。
仕組みを理解して、現場の実務や第一種電気工事士・電験三種の計算に役立ててください。