高圧受電設備(キュービクル)の安全を守る要となるのが過電流継電器(OCR:Overcurrent Relay)です。
電気設備の維持管理や第一種電気工事士、電験三種の試験において、必ず出題されるのが「OCRの動作特性(反時性・定時性)」と「保護協調(上位遮断器とのタイムラグ設定)」です。
「反時性と定時性って何が違うの?」「保護協調の曲線が重なるとどうしてダメなの?」といった疑問を持たれる方向けに、動作特性の違い、保護協調の仕組み、整定値の考え方まで分かりやすく解説します!
1. そもそも過電流継電器(OCR)とは?
過電流継電器(OCR)とは、電路に定格を超える大きな電流(過負荷電流や短絡電流)が流れたことをCT(変流器)経由で検知し、真空遮断器(VCB)などに「トリップ指令(遮断信号)」を出す保護用リレーです。
・ 過負荷: 設備の使いすぎなどで少しだけ電流がオーバーしている状態
・ 短絡(ショート): 絶縁破壊などにより数千アンペア級の凄まじい大電流が流れる極めて危険な状態
OCRは、この「軽微な過負荷」と「危険な短絡」を適切に見極めて動作する必要があります。
事故時に遮断器(VCB)を動作させる「短絡電流(数千アンペア)」の大きさを割り出すために使われるのが「パーセントインピーダンス(%Z)」です。%Zの定義と短絡電流の計算方法はこちら。
2. OCRの2大動作特性(反時性 vs 定時性)
OCRの動作特性には、大きく分けて「反時性」と「定時性」の2つ(およびそれらを組み合わせた反時性定時性)があります。
① 反時性特性(動作時間 ∝ 1 / 電流)
「流れる電流が大きければ大きいほど、短時間で(一瞬で)動作する」 という特性です。
・ 電流が少しだけ大きい(軽微な過負荷): すぐには遮断せず、しばらく様子を見る(数秒〜十数秒)
・ 電流がめちゃくちゃ大きい(短絡事故): 設備が焼き切れる前に、一刻も早く遮断する(0.1秒以下)
💡 なぜ様子を見るの?(ワンポイント解説)
モーターの起動時など、事故ではない「一瞬の大きな電流(起動電流や励磁突入電流)」でいちいち停電してしまっては作業になりません。そのため、少しの過電流なら耐えて、本物の事故大電流のときだけ一瞬で切るために「反時性」が必要になります。
② 定時性特性(動作時間 = 一定)
「設定した電流(動作電流)を超えたら、電流の大きさに関わらずあらかじめ決めた一定時間で動作する」 という特性です。
・ 電流が動作閾値を超えたら、大電流でも小電流でも「指定した秒数(例:0.5秒)」で正確に動作します。
【動作特性の比較】
[反時性] 電流:小 ──➔ 動作時間:長い(じっくり待つ)
電流:大 ──➔ 動作時間:短い(一瞬で切る!)
[定時性] 電流:大でも小でも ──➔ 動作時間:常に一定(設定通り)

OCRの反時性特性が重要となる代表例が、電動機の「起動電流」です。そもそも起動電流そのものを1/3に抑える「スターデルタ始動法」の仕組みとトルク変化の計算解説はこちら。
3. なぜ重要?「保護協調」とタイムラグの仕組み
過電流継電器を理解する上で避けて通れないのが「保護協調(ほごきょうちょう)」です。
保護協調とは、「事故が発生した際、事故箇所に一番近い遮断器だけをピンポイントで切り、健全な他の設備まで巻き込んで停電(波及事故)させないためのルール」 です。
動作特性曲線の上下関係(タイムラグ)
保護協調を取るためには、電源側(上位)から負荷側(下位)にかけて、動作特性曲線が交差しないようにタイムラグ(時間差)を設けます。
- 下位遮断器(事故点のすぐ近く): 最も速く動作させる(例:0.1秒)
- 上位遮断器(受電設備側): 下位が切れるのを見届けるため、少し遅らせて動作させる(例:0.4秒)
もし上位と下位の動作特性曲線が交差(交わって)してしまうと、末端の事故なのに受電設備全体のメインブレーカーが落ちてしまい、ビル全体が全停電する「波及事故」につながってしまいます。

4. 試験でよく出る整定計算と動作時間
第一種電気工事士や電験三種の試験では、「レバー位置(ダイヤル)」と「タップ位置(電流)」から動作時間を計算する問題が出題されます。
【問題】
CT比 40/5 A の回路において、OCRのタップを 5A、レバーを 2 に設定している。この回路に 400A の短絡電流が流れたとき、動作特性曲線から「タップ電流の1000%のとき、レバー1での動作時間が 0.5秒」である場合、実際の動作時間 [秒] を求めよ。
【解説】
- 1次側電流 400A を2次側(CT経由)に換算する:2次側電流 = 400A × (5 / 40) = 50A
- タップ設定 5A に対する電流倍率(%)を求める:倍率 = 50A / 5A = 10倍(1000%)
- レバー位置による動作時間の倍率計算:レバー 1 のとき 0.5秒 なので、レバー 2(2倍のタイムラグ設定)の動作時間は、動作時間 = 0.5秒 × 2 = 1.0秒
答: 1.0秒
本記事の内容は、以下の公的規格および法令に基づいて記載しています。
・ 準拠規格: 日本産業標準調査会(JISC)JIS C 4602(高圧受電用過電流継電器)
過電流継電器の構造、動作電流・動作時間許容差、反時性・定時性特性の区分が定められています。
・ 関連法令: 経済産業省『電気設備技術基準の解釈』第63条(PDF)
過電流遮断器の施設要件および保護協調の原則について規定されています。
・ 試験出題例: 一般財団法人 電気技術者試験センター「第一種電気工事士 筆記試験」「電験三種(電力・機械科目)」にて、動作特性曲線の読み取りと整定計算が出題。
まとめ:動作特性とタイムラグで波及事故を防ぐ!
過電流継電器(OCR)の要点を整理しましょう。
・ 反時性: 電流が大きいほど早く切れる(突入電流による誤動作防止)
・ 定時性: 設定電流を超えたら一定秒数で切れる
・ 保護協調: 事故点に近い下位を先に切り、上位の遮断を遅らせて全停電を防ぐ
💡 あわせて読みたい保護回路・設備トラブルの関連記事
高圧受電設備の保護や電気計算の基本について、以下の記事もあわせて確認しておきましょう!
・ [関連記事]
【なぜ起きる?】変圧器の励磁突入電流(インラッシュ電流)のメカニズムと5つの対策を徹底解説!・ [関連記事]
【なぜ危険?】CT(変流器)の2次側開放で高電圧が発生する理由と正しい対策を徹底解説!